川崎健『イワシと気候変動:漁業の未来を考える』

イワシと気候変動―漁業の未来を考える (岩波新書)

イワシと気候変動―漁業の未来を考える (岩波新書)

 先日読んだ、中公新書の『イワシはどこへ消えたのか』と同じテーマの本。こちらは「レジームシフト理論」を提唱した本人の著作だけに理論的な話がわかりやすい。
 全地球規模での気候変動と生態系の同期、平衡理論への批判、漁獲規制、とくに日本国内の乱獲問題と広く漁業と生態系の問題を論じている。
 漁獲規制の問題については、第6章で論じられている。ここの最後に「行政機関から独立した科学者の常設委員会」を作るという提案をしている。しかし、これはナイーブな議論のように思う。「審議会」の類の人選に見るように、そう簡単に「独立」などというものは確保できない。それに「科学者の中立性」というのも、政治的な、利権がかかった世界では、信用できない。どう調整するか、それが難しい。