横井勝彦『アジアの海の大英帝国:19世紀海洋支配の構図』

アジアの海の大英帝国―19世紀海洋支配の構図 (講談社学術文庫)

アジアの海の大英帝国―19世紀海洋支配の構図 (講談社学術文庫)

 イギリスのアジア侵出と蒸気船の関係について論じたもの。
 第1章はアジアへの蒸気船航路の話、2,3,4章はアヘン戦争など中国の「開放」に果たした蒸気砲艦の役割について。東インド会社の海軍の役割。第5章は、全体的な植民地・海軍政策と蒸気船製造業者について。
 水路の状況にかかわらず行動できる蒸気砲艦が内陸部への兵力を導いたこと、東アジア方面への兵力の展開をしやすくしたことが中国に対する、蒸気船の役割であった。ただ、この時点で清朝の力が十全のものであったならば、結果は違ったことになったかもしれないなとも思う。そのあたりに僥倖もあったのだろう。基本的に、ヨーロッパ諸国が軍事力で地元の抵抗を打ち破って、植民地化できるようになるには、20世紀を待たなければならなかったのではないだろうか。
 あと、本書の著者は『大英帝国の<死の商人>』を書いた人らしい。順調に研究を重ねている模様。