高村直助編著『企業勃興:日本資本主義の形成』

企業勃興―日本資本主義の形成

企業勃興―日本資本主義の形成

 1880年代、松方デフレからその後の企業ブーム期の日本経済を扱った論文集。草創期の日銀、鉄道・紡績・鉱山などの産業の展開、輸出先の市場などが論じられている。とりあえず、現在の関心に触れる論文は無し。全部は読んでいない。
 第6章の鈴木淳「機械工業の市場と生産」、第7章東條由紀彦「初期製鉄業と職工社会」、第10章大豆生田稔「米国生産の拡大と対ヨーロッパ輸出の展開」あたりが印象に残ったかな。第6章は、機械工業が当該時期には1883-6年ごろの軍需生産中心、1887-91年ごろの民需生産中心と二つの時期に分けられること。後者の時期には、地域的市場が発展し、業者間の競争による発展がみられたと指摘。基本線は『明治の機械工業』と同内容。第7章は、大島高炉で培われた技術が、その後かかわった職工が受け継がれなかったために継承されなかったこと。これが、釜石の製鉄の発展を妨げたと指摘する。最後は、1880年代の米穀輸出の話。この時代だけ、日本はコメの輸出国であった。この時期、ヨーロッパで食用としての需要が一定程度あったらしい。