寒川旭『日本人はどんな大地震を経験してきたのか:地震考古学入門』

 記録や遺跡に残された情報をもとに、日本列島での地震の歴史を再構成している書物。まあ、同じ著者なら、中公新書の『地震の日本史』asin:412191922Xを読めば、こちらを読む必要はない感じだが。大まかに海溝型地震と断層型地震に分けて記述している。エピソード的な情報はこちらが豊富か。あと、どうしても九州や北海道方面の情報は少なめに感じるな。
 地震の災害で怖いと言えば、津波もそうだが、山体崩壊が怖いなと感じた。帰雲城の事例や島原の眉山崩壊なんかの事例を見ると。そう言えば、島原の眉山って、当時は「前山」って呼ばれていたようだ。本書では「前山」表記で、地元に近い人間は違和感を禁じえないわけだが。近年は人口密集地での大規模な山体崩壊は起きていないが、規模としてはなかなか怖いレベルのは起きているしな。
 エピソードとしては、断層が阿賀川を堰止めて湖を作った1611年の会津地震が興味深い。定期的に下流側がせき止められる場所で、河川はどのように形成されたのか気になる。地形図で調べると、断層の場所が明瞭に丘陵と平野の境目になっているのが印象的だった。