千葉達朗『活火山活断層 赤色立体地図でみる日本の凸凹』

活火山 活断層 赤色立体地図でみる 日本の凸凹

活火山 活断層 赤色立体地図でみる 日本の凸凹

 題名どおり、赤色立体地図で活火山や活断層を見る本。慣れてくると、確かに溶岩流や火口が見分けられるようになっておもしろい。もっと大縮尺だとよかったが、そうなると見開きに収まる範囲が狭まってしまうからな。活断層も紹介されているが、扱いは小さい。
 しかし、こうして火山の履歴を見ていると、巨大な噴火がいくつも起きているんだなと。今起きると数万人規模で死人が出そうな災害が。巨大火砕流とか、巨大山体崩壊とか。つーか、山体崩壊が怖いな。あと、溶岩流や火砕流で覆われた土地は平坦になるので、いったん収まったあとは人間にとって便利な土地になるのが興味深い。
 印象に残った山をいくつか。岩手山の広大な山体崩壊の痕跡。東側の裾野は片っ端から岩屑流の流山が見られる。都市近くで、麓に多数の人が住んでいる土地に、頻繁に山体崩壊を起こす火山があるんだよな。続いては、浅間山。溶岩流に火砕流に、山体崩壊による岩屑流と、火山災害のフルコースがすごい。広い範囲を火砕流堆積物でうめているんだからな。一方で、軽井沢のような風光明媚な地を生み出し、溶岩流の上ではキャベツ畑がひろがる、火山の恩恵も見えるのが興味深い。あと、三宅島の頂上火口や割れ目噴火の溶岩流に、海岸の水蒸気爆発跡と逃げ場なしな感じも怖い。危険地帯としては、他に別府かな。西側の伽藍岳や鶴見岳は、山体崩壊の痕跡があるし、土石流危険地域なんだよな。砂防工事が行われているけど、全体に居住域を広げてしまったのは失敗なんじゃないかねえ。
 富士山の青木が原樹海や中国地方唯一の活火山阿武火山群のような多数の火山の痕跡がある土地も、火山跡を探す楽しみが。九州南部に阿蘇を含め巨大なカルデラが複数存在するのも壮観というか、恐ろしいというか。過去には、九州を覆いつくした阿蘇火砕流のような破局的な噴火があったわけだしな。
 山体崩壊と言えば、象潟をつくった鳥海山の山体崩壊もこわいな。広い範囲に流山が見られるし。