トマス・ニューディック『ヴィジュアル大全:航空機搭載兵器』

ヴィジュアル大全 航空機搭載兵器

ヴィジュアル大全 航空機搭載兵器

 図書館の新刊のところで見かけて、気になって借り出してきた本。基本的な知識がお留守だなと。
 題名の如く、戦後に開発された、航空機から投下ないし発射する兵器を紹介した本。機関銃の類は収録されていない。空対空ミサイル、空対地ミサイル、対艦ミサイル、対戦車ミサイル、爆弾、ロケット弾、クラスター弾とその射出装置に分けて解説している。まあ、初心者用としては、悪くない本だと思う。ただ、校正が悪いのはいただけない。本文の下にミサイルのイラストと解説が付けられているのだが、データの表記の仕方がそれぞれで違っていたり、別のミサイルの解説が入っていたりで、読みにくい。あと、ミサイルの開発とそれが戦争でどのように使われたかを簡単に知ることができるのだが、「引く本」として考えると、検索性やデータの深さが物足りないような気がする。
 航空機搭載兵器としては、空対空ミサイルと無動力の爆弾が二大勢力なんだな。逆に、空対地ミサイルの眷属が意外と少ないのが驚き。現在では誘導爆弾が主流で、空対地ミサイルは、防空体制が堅固な目標とか高価値目標に限られているという。兵器値段をみると、JDAMが異様に安いのだがどういうことだろう。誘導爆弾は、動力をつけていないだけ、制御が簡単ということなのだろうか。これは、誘導爆弾を使うわ。
 戦後の戦争で、どのようにミサイルなどが使用されていたのかも解説されていて、これが興味深い。AAMは1970年代までは非常に信頼性が低く、戦果をあまり挙げられていなかったこと。これが、90年代以降の新世代のミサイルでは、撃墜確率が上昇し、空戦の主兵器となっている姿。対地誘導兵器の発展。ベトナム戦争で橋などの堅固な目標を破壊するために発達し、湾岸戦争ユーゴスラビアの紛争、対テロ戦争とだんだんと誘導爆弾の利用率が上がっていく。湾岸戦争だと、通常型爆弾が多数使用され、空対地ミサイルと誘導爆弾が3:2くらいの割合で利用されている。それが、対テロ戦争では誘導爆弾全盛と。空対地ミサイルは、スタンドオフ核ミサイル、巡航ミサイル、堅固な目標へのミサイル、対レーダーミサイルが主な眷族と。
 対艦ミサイルに関しては、イラン・イラク戦争において、ペルシャ湾で互いにタンカーを破壊しあった事例が紹介されているのが興味深い。あとは、ロケット弾とクラスター爆弾クラスター爆弾に関しては、イラストで紹介されいるのがディスペンサーばかりなのがちょっと不満。子弾の種類や機能、外観なども、もっと丁寧に説明して欲しかった。まあ、クラスター爆弾に関しては、情報の規制が厳しいのかもしれないが。
 アメリカとソ連/ロシア、ヨーロッパの兵器が中心だが、東アジアや中東、南米の諸国のミサイル類も紹介されているのが良い。