安西水丸『ちいさな城下町』

ちいさな城下町

ちいさな城下町

 タイトルの通り、10万石以下級の城下町を探訪した紀行。自身の思い出と、現地の模様と、歴史の薀蓄が渾然一体として、楽しく読める一冊。地図と首っ引きでみると、どこをどう動いたか分かることもあるな。逆に地図とにらめっこだと、なんかよくわからない回もあるが。小規模な大名の城下町が楽しそう。愛媛県の大洲、岡山県の高梁、福岡県の朝倉市なんか。どこでも同レベルで薀蓄を傾けられるのがすごいな。
 東京を拠点にしているため、関東から東北に偏るのは致し方ないが、九州は中津と秋月だけか。大分あたりには結構あるのにもったいないなという感じも。私が行ったことあるのは、杵築、臼杵、日出あたりかな。九州は外様の国持ち大名が多くて、小規模城下町は少数派って感じだけど。大分・宮崎くらいかな。熊本県内だと、支藩があった宇土か、相良家の人吉くらい? 八代は、熊本藩のもう一つの城下町だけど、近代に工場が立地して、改変されて、あまり城下町らしい雰囲気はないんだよな。
 こう、自分で行きたくなる、楽しい紀行であった。