図解・橋の科学―なぜその形なのか?どう架けるのか? (ブルーバックス)
- 作者: 田中輝彦,渡邊英一,土木学会関西支部
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/19
- メディア: 新書
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構造物や材料の対する負荷など力学の基礎、桁橋から斜張橋に至るまでの様々な橋の建設の技術、さらに橋の維持について、30章に分けて解説している。
材料工学の圧縮や引っ張りがどういう意味を持つのかとか、そういうことなのね。断面係数の話も興味深い。厚みが増すと、厚みの増加率より大きく重さを負担できるとか。風や様々な荷重、気温の変化による材料の伸縮にどのように対応するか。橋桁を支える支承が、可動式になっているとか。機会があったら、気をつけて見てみよう。
第二部は、橋の建設。明石大橋の土台となるケーソンの設置。基盤まで掘って、その上に直置き、周囲は石で固めるか。それで、アレだけの巨大建造物の土台になっちゃうんだな。土台の周囲の土砂が流される洗掘を押さえるのが重要であること。大規模な浮橋。船の交通に合わせて動かせる夢舞大橋がすごいな。
上部工の建設方法。地面から支えを出したり、空中で作業していったり。つり橋のメインケーブルがすごいな。六角形の「ストランド」を束ねて、円形に成型する「スクイジング」って具体的に何をやるのだろうか。巨大な橋ほど、各部の精度が重要になってくるとか。
第3部は橋の維持管理。風の力や維持管理の不足による橋の崩落事故。さらに、阪神大震災による橋の被害とそれを基にした対策。橋の維持管理の重要性。つーか、高度成長期に作られた橋が、いっせいに老齢になっていくってのは怖い話だ。ライフサイクルコストを重視した設計や制度を構築していく必要性が紹介される。その成果として、つり橋からアーチ橋に改築された三好橋やアーチ橋から桁橋に改築された加納跨線橋などが紹介される。こういう、改築はおもしろいな。
以下、メモ:
船に道をゆずるわけではありませんが、富山県高岡市の千保川に架かる内免橋は、川が増水すると、動いて身をよける橋です。
水かさが増して水位が高くなり、さらにゴミなどの流出物が橋にひっかかったりすると、川から水があふれて、付近の住宅地を浸水させてしまうことがあります。橋の両端に設けられたジャッキが動いて、橋全体を1mほど持ち上げてしまうのです。こうすれば水がよく通るので、あふれることはないわけです。p.217
へえ。おもしろい。
2007年11月、徳島県と香川県の県境で、20mばかりの橋をトラックが渡り終えようとしていたとき、橋が崩落しました。幸いトラックは後輪が浮いた状態のまま川には落ちず、乗っていた人は軽症ですみましたが、この事故で思いがけないことが判明しました。この橋の名前や架けられた年が、すぐにはわからなかったのです。50年前に架けられた橋であること、管理が不十分で桁が腐食していたことがわかったのは、しばらくたってからでした。なにげなく使っている橋の中には、記憶や記録から消えかけ、老朽化する一方のものもあることに気づかされる事故でした。p.257
結局、橋の名前はなんだったんだろう。しかし、橋の架橋年がわからないって、どういう管理をしていたんだろうな。すごい話だ。