岡寺良他編『九州の名城を歩く:熊本・大分編』

 なんか、めちゃくちゃ時間がかかった。予約が入っているので、急いで返却予定。


 タイトルのごとく、熊本県大分県の城郭から精選したものを紹介する本。熊本36ヵ所、大分31ヵ所を紹介。隈部氏館や相良頼影館、真玉氏館、大友氏館のような中世城館から、中世山城、熊本城や府内城などの近世城郭までを紹介。ここまで多様な城を紹介するなら、古代山城の鞠智城も紹介して良かったんじゃなかろうか。福岡編での扱いはどうなのかね。


 近世城郭が意外に多いのが印象深い。九州に入部した豊臣系大名、加藤、小西、黒田、細川などによって支城網が形成され、その後の一国一城令で廃絶された城がけっこう多い。あとは、中世山城も目立つものは改修されて、支城に組み込まれているのだなあ。
 熊本だと、熊本城、八代城、人吉城といった存続した城や小西行長の城、宇土城などはすぐに近世城郭として思い浮かぶけど、加藤氏の支城の南関城、佐敷城、小西氏の支城甲佐にある陣ノ内城。特に後者は阿蘇氏の城と思われていたのが、調査で近世城郭と判明したというのが印象深い。近世城郭は、だいたい、地理院地図の傾斜量図などでしっかり痕跡が見えるのも楽しい。山城は、どうしてもレーザー測量の精度が低くなっているし。
 中世の城が、豊臣系大名によって改修されている事例も多いのだな。水俣城や人吉城のような複郭式の城が、近世の城になるとぎゅっと圧縮される。人吉城は防御力が下がっていると思うけど、水辺・平地に近い方が重要だったのだろうか。
 豊福城は、複数にわたって移転を繰り返しているのが印象深い。小西行長が建設した城が一番のこりが良くて、中世の


 戦国時代の国衆の城、田中城、竹迫城、中世宇土城などは丘を利用した、比較的規模の大きい城で印象深い。竹迫城の惣構えとか。一方、中世山城、小代山の筒ヶ岳城、古麓城、佐敷東の城は山の尾根を利用した城。山の頂上の城って、防御に必要な人数は節約できそうだけど、不便そうだなあ…
 人吉、天草の城が紹介されているのも興味深い。防御施設的には多少牧歌的な雰囲気の天草の国衆のお城。人吉の山城。文字史料が存在しない高城が印象深い。


 大分のほうが行った事ある城多いかな。杵築城、日出城、臼杵城、岡城の四ヵ所。
 発掘調査の紹介などからすると、山城って、普段から人が常駐している感じじゃなくて、軍事的緊張が起きた時に整備されるのかな。出土遺物の年代が、かなり飛び飛び。
 中津城や光岡城、高森城は、地理院地図の傾斜量図などで惣構えの痕跡とか、堀跡とか、土塁がしっかり見えて楽しい。
 畝状竪堀が作られている山城が多いのも印象的かな。
 玖珠町のメサの上に作られた角牟礼城や切株山城が印象深い。山の上に大きな平場が自然にあって、周りは切り立ってるから、守りやすそう。前者とか、なんかかっこいい。後者は、それぞれの氏族が独立の土塁を構えているのがおもしろい。
 島津氏の豊後攻略の陣城、松尾城は駐屯地であることを優先した作りが、また風情が違うなあ。