- 作者: 小川幹生,畑智子,村田理如,石黒知子
- 出版社/メーカー: INAXo
- 発売日: 2009/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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絵柄の輪郭を金属線で画する「有線」七宝を極めた並河靖之の工房。1900年代に、並河靖之のもとを訪れたイギリス人写真家の手記が興味深い。下絵が多数残されていて、一致する作品もある。あるいは、さまざまな作品紹介。細密な表現と大面積を一色で残す余白のコントラストが、この人の作品の特徴だな。細かい表現は、植線が難しい一方、大面積を一色の釉薬で色づけするのは焼成の難度が上がる。抱えていた植線職人の加工技術と、並河自身の焼成技術、二つの高度な技術がつながっての、作品と。
一方で、有線の細密加工技術で、度肝を抜くのは、38-9ページに紹介される粂野締太郎の群蝶文七宝小箱かな。
7センチ×9センチの面に、どれだけ蝶を詰め込んでいるんだという。
49-60ページは、解説。日本の七宝の歴史と外貨獲得手段として重要視された明治の工芸。「畑智子」で検索すれば、七宝とか、工芸に関する論文があるかな。
ラストは、安藤七宝店の製作の姿を紹介。どの線を拾うかとか、釉薬は秘伝とか。
ここでは、あまり紹介されないが、時代ごとの趣味の変化も興味深いな。現在、製作販売されている七宝の製品は、半透明の釉薬をかけた、「玉」っぽい質感の作品が多いんだよな。