「うちのイチ押し:川尻刃物 林昭三刃物工房(熊本市):鍛えた鋼 切れ味に技」11/11/2

くまもと手しごと研究所|No.360 手打ちの技・川尻包丁
 また、買っちまった! 熊本川尻の林昭三刃物工房
 川尻で刃物生産が盛んになったのは、やはり舟運のおかげなのかね。今は、3人だけか…
 私などは、こういう道具の手入れができない質のようだからなあ。

 1千度の炎と金づちで鍛え上げた刃。野菜にそっと当てると、吸い付くような感触を残して切れた。
 熊本市川尻1丁目の林昭三さん(83)は、この道65年の職人。1979年に県の伝統的工芸品に指定された。昔ながらの工法で刃物を生産し、修理も請け負っている。
 川尻刃物は、硬い鋼を軟らかい「極軟鋼」で挟む「割込鍛造」が特徴だ。硬軟2種類の鉄の塊を窯の中でオレンジ色になるまで加熱。ペンチのような工具で挟み、金づちでたたきながら形を整える。冷えたら再び窯で焼き、成形する作業を繰り返す。
 最後はヤスリで研いで黒い鋼の部分を出し、木製の柄にはめ込めば完成。窯の燃料は不純物が少ない松炭を使ってきたが、最近はコストを抑えるため工程によって石炭も併用する。価格は家庭用が5千円〜8千円台。魚をさばくのに適した「片刃鍛造」と呼ばれる型には2万円を超すものもある。
 川尻刃物の歴史は、室町時代の15世紀半ばまでさかのぼるという。以前はくわや鎌などの農具が主力だったが、農業機械の普及で衰退。取って代わった包丁も大量生産される安価なステンレス製に押され、売れ行きが芳しくないという。林さんの記憶では、戦前の川尻地区には十数軒の工房が軒を連ねていたそうだが、残る職人は林さんを含めて3人だけになった。
 林さんは「手打ちで作った鉄の包丁は、実際に使うと切れ味の良さが分かってもらえる。熱湯をかけて、きちんとふけばさびることもない」と伝統の魅力を語る。
 林さんの刃物は工房近くのくまもと工芸会館や県伝統工芸館(熊本市千葉城町)で取り扱っている。問い合わせは工房(096・357・9782)へ。   (岩崎生之助)