開館四十周年記念展「雪舟流と狩野派:細川家を魅了した日本絵画の至宝」

 永青文庫と松井文庫に所蔵されている絵画を中心に、細川家に関わる、雪舟やそれに私淑した画家、狩野派の作品を展示。後半はごっそりと入れ替わるらしい。そのため、リピーター割引もあるそうで。これ、何回もできるのかな。
 日本画は、どこに使われたとか、画題の意味とか、約束事が多くて、19世紀あたりの西洋絵画と比べると、敷居が高い感じはある。


 全体の構成としては、「雪舟という規範」「狩野派の席巻」「雪舟を継いだ絵師たち」「狩野派と熊本」「矢野派の再興と興隆」「領内名勝図巻」の6章構成。16世紀までの絵画って、誰が描いたか確定しにくいのだな。前半展示で、雪舟作と確定的に見られているのは「倣高克恭山水図巻」の半分のみ。しかも、大名同士で切り分けたり、襖絵を掛け軸に加工したりするから、分かりにくいのだろう。「倣高克恭山水図巻」を基準に、伝雪舟の絵を見ると、「富士三保清見寺図」はちょっと繊細すぎるし、山水図もなんか違う感じ。
 絵画を真体、行体、草体と規格化し、扇絵の生産などで多数の弟子を養い、大規模な絵画の注文にも応じられるようになった狩野派が、近世の画壇を席巻する。一方で、狩野派に属さない絵師は、結集軸として「雪舟」の名前を持ち出したというのがおもしろい。長谷川等伯や雲谷等顔などが、明確な派閥を作っていたわけではないと。
 雪舟の画風を受け継ぎつつ、一時は狩野派への鞍替えを命じられるなど、苦難の道を歩んだ矢野派。細川重賢に見出され、系譜をつなぐことができ、熊本藩の御用絵師として存続する。
 長谷川等伯の波濤図とそれを写した矢野良勝の波濤図屏風が、個人的には好きだな。矢野の波濤図は、線が太くなって、浮世絵っぽい雰囲気が良い。


 最近、環境史がらみで、「領内名勝図巻」を見るたびに、植物がどのように描写されているのか、じっと見つめているが、この図巻おもしろいな。川沿いの切り立った崖際は、かなり木が残っているようだが、少し平坦な場所では、潅木や草ばかりのように見える。現在の写真と比べると、滝の周辺で、明らかに木が多くなっているところがある。やはり、田に鋤きこむ、飼料などの用途で、かなり周囲の植生が圧力を受けていたとは言えそうだな。