宮澤伊織『裏世界ピクニック:ふたりの怪異探検ファイル』

 ふと気づくと、異世界に行ってしまっている。ふと、扉を開けると、エレベーターを決まった順番で操作すると、そのような異世界「裏世界」を自由に行き来できる。
 偶然、入り口を見つけて、興味本位で探索していた紙越空魚は「くねくね」と遭遇して、死にかける。そこを仁科鳥子に助けられ、二人で裏世界を探検するようになる。


 なかなか、怖くて、いいですな。ラストの、解決したような、してないような結末も。現実が徐々に侵食されていくような、居心地の悪さが印象に残る。結局、コンタクトを試みていた、何らかの存在は、目的を達したのかね。言語や認識がおかしくなって、裏世界では文字が読めなくなってしまうとか、なかなか怖い。
 さまざまなネット怪談をモチーフに使っているのが、興味深い。一時期、洒落怖のまとめサイトに入り浸っていたから、くねくね・八尺様・如月駅は読んだことがあるけど、時空のおっさんは知らなかったな。物語の設定としては、空魚の知識にアクセスして、そういうのが出現したってことなのかな。
 とりあえず、裏世界に踏み込む主人公二人の壊れっぷりが、尋常じゃないな。鳥子のほうは匂わされているだけだけど、空魚にいたっては、なんかものすごいな。作中で「依存性サイコパス」とか言われているけど、それ以上に、なんか、怪異を呼び寄せる系なんじゃ。まあ、そういう欠落した二人だからこそ、強く結びつくものと。
 結局、閏間冴月という人物はどうなったのだろう。なにか飲み込まれてしまったのか、あるいは、そもそもが人外の存在だったのか。