永田和宏『人はどのように鉄を作ってきたか:4000年の歴史と製鉄の原理』

 うーん、わかったような、全然わかっていないような。製鉄とは、酸化した鉄を還元して、木炭や石炭からの炭素を供給して融解させるというのが基本的な原理と言うことでいいのかな。その過程で、リンなどのいらない成分を、どう調整するかがキモと。
 たたら製鉄やボール炉、レン炉など、前近代の製鋼法を研究して、それがどのような仕組みで不純物が少なくできているか、さび付きにくいのかなどを研究している研究者による、製鉄の歴史やどのような仕組みで変化が起きているのかを紹介する本。


 4-9章は、ヨーロッパの製鉄の歴史。フィンランドのルッペ製造炉や高炉から始まって、古代から現在に至る製鉄の歴史。どう成分を操るか。溶鉱炉だと、たたら製鉄やルッペ製造と比べて、リンや硫黄などの不純物を吸収してしまう。それをどう防ぐか。
 10-16章は、日本の在来製鉄の技術の研究。たたら製鉄やその産物の脱炭、鍛冶師や鋳物師の作業の工程で、どのような反応が起こっているか。製鉄や鍛冶の最中に起こる「沸き花」がどんなものか。和鉄が、酸素を過飽和で含んでいて、すぐに黒錆でコーティングされるため、腐朽しにくいなど。
 のこりは、ルッペや和鉄の不純物の少なさとか、デリーの鉄柱がどのように作られたか、マイクロ波製鉄の話など。
 細部が理解できていないため、大まかにしかまとめられない。元は、雑誌の連載だったそうで、道理で章の数が多いわけだ。

 火山列島である我が国では、河川の淀みや海岸の砂浜の黒くなったところで砂鉄は磁石で容易に採取できる。しかし、ほとんどの河川や海岸で採れる砂鉄は小粒で、チタン酸鉄鉱石が含まれている。チタン酸鉄鉱石は磁石に付かないが磁鉄鉱の砂鉄と分離していないので、磁石で採取しても酸化チタン濃度が高い砂鉄が取れる。酸化チタン濃度が高いとノロの融点が上がり粘性が高くなるので流れにくくなる。そこで炉の温度を高くせざるを得ず燃料代がかさみ、鋼中のリン濃度が高く脆くなり品質が落ちる。p.138

 酸化チタンが含まれると、品質が落ちる。で、磁鉄鉱の濃度が高い中国地方や岩手に製鉄が集中したと。なんで、たたら製鉄が島根あたりなのかなと思っていたが、こういう理由か。