川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 雑誌に連載されたエッセイを、一冊にまとめた本のようだ。24本の記事が並んでいるので、なかなか感想が書きにくい。基本的には、著者の専門である島嶼生態系とか、外来種問題が多い。題名に反して、やはり、著者は鳥が大好きだよなあ、と。子供のころから、大好きだったわけではないってだけだよね。
 相変わらず、ネタだらけの文章。あと、真面目なよた話も楽しい。キョロちゃんの生物学的考察とか、死んだふりの有効性とか。
 鳥類学者は、普段から、こんな感じの事をやっているといったところか。


 島嶼の鳥については、別に本もあるが、やはりコストをかけて飛んでいるので、敵がいない場所では飛びたくない、と。で、独特の分布が出来上がる。小笠原のメグロの話。あるいは、八重山諸島での、ズグロミゾゴイの分布調査の話が興味深い。
 第2章は、南硫黄島の調査の顛末。周囲が断崖絶壁の無人島での調査の過酷さ。あと、スカベンジャーがいないため、死体が残り、それにハエが集りまくる状況とか。口の中に入ってくるのはきついなあ。マスクが必要。
 島嶼への外来種の侵入というか、人間が持ち込む問題も、なかなか難しいなあ。ヤギが植物を食べまくって、荒地化するから、駆除したら、今度は外来植物が繁茂しまくる。あるいは猫の食害とアカポッポこと、アカガシラカラスバトの保護。あるいは、ネズミの食害の問題。ネズミって、植物にも、動物にも、ダメージを与えるのか。


 鳥に食べられても生き延び、拡散の手段にするカタツムリ。急速に変貌するインドネシア熱帯雨林の姿。
 小笠原諸島のオガサワラヒヨドリ八重山諸島出身で、その南の火山列島のハシブトヒヨドリは本州・伊豆諸島出身という、不思議な分布がDNA検査から明らかになった、エピソードも興味深い。隣り合って、交雑しないのも、なんで南側に本州出身のが孤立して存在するのかも。世の中、不思議なこともあるのだな。
 新種の鳥を発見し損ねたお話も、おもしろい。同じ種の標本を手に入れていたのに、近縁種との比較調査をサボっていたら、先にやられちゃった。それが、ブライアン・シアウォーターと。


 生物の回転か。微生物は回転を利用しているような気がするが。大型の動物だと、やはり、視界の問題が大きいのかな。汎用性に欠けるのも、問題なんだろうな。