郡司芽久『キリン解剖記』

キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)

キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)

  • 作者:郡司芽久
  • 発売日: 2019/07/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 キリンの首の構造を解明して博士号をとった著者の、キリン研究を目指したところから博士論文を出すまでがメイン。どんなに好きでも、学位を取るには、「研究テーマ」を発見する必要がある。そこで四苦八苦する著者。しかし、大型動物は運び出しの際に、部位ごとに切断されるため、こういう部位の境目がブラックボックスになっていた。
 哺乳類は7つの頸椎で共通しているが、先行研究には、第一胸椎が第八の頸椎であるという主張の論文があり、しかし、説得力不足で棄却されていた。著者は、献体してくれる動物園に頼んで、首の基部がつながった状態で解剖。あるいは、幼体による実験。オカピとの比較などで、キリンの第一胸椎が、肋骨がつながった胸椎でありながら、肋骨との接続や筋肉の配置によって動くようにして、第八の頸椎として機能させているという論文を発表。これで、キリンの研究を一つ完遂する。
 大型動物の解剖の大変さ。それでも、キリンはスリムでまだマシとか。あるいは、動物の遺体を解剖しないと学べないけど、学ぶには命が一つ消えているという葛藤も印象深い。


 そういえば、熊本市動植物園では、ここ数年、マサイキリンの死亡が続いているけど、あの子らも、この人のところに行って、科博で標本になっているのだろうか。今、一頭残ってる秋平一頭で、ちょっとスペースの割に寂しい状況なんだよな。


 ファンジの剥製のエピソード、ちょうど直前に読んだ『アラン・オーストンの標本ラベル』に出てきて、印象深かった。


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