『milsil』Vol.10No.5、2017

 今号は、「コケ」の特集。「コケ植物」ないし蘚苔類と呼ばれる一群を追ったもの。維管束を持たない陸上植物。シダ植物が受精卵から育つ「複相」と呼ばれる段階がよく見かける部分なのに対し、コケ植物では胞子から成長した配偶体が普段見かける部分と、特徴に差がある。共通祖先からどのように分化したか。
 胞子はともかくとして、植物体が残りにくいため、過去の姿が分かりにくいが、8500万年前の琥珀に閉じ込められた化石が岩手県久慈市で発見され、貴重な情報源になっている話。鉛などの重金属をトラップするコケの開発。園芸用土として「採掘」されるミズゴケとそのピートの回復のため、あるいは湿地の維持のためのミズゴケの栽培技術の研究など。阿蘇で研究中なのか。
 少し離れて、コケテラリウムの記事もおもしろそう。


 他の記事としては、遺伝子重複の話が興味深い。脊椎動物は、脊索動物から分化する時点でこれが起きて、遺伝子が倍増している。そして、そのような余り遺伝子を利用して、様々な環境に適応した。しかし、遺伝子重複が起きていない昆虫などと比べたときに、脊椎動物の成功は限られたもので、どこまで有利な変化かは疑問。
 犬は、遺伝子重複でアミラーゼをたくさん作る個体が、家畜として適応したとか。
 仙台で科学教育や自然史博物館を運営してきた齋藤報恩会から移管された、齋藤報恩会貝類コレクションの話とか。東北の貝類の研究は蓄積に乏しい。そのなかでまとまったコレクションであること。あるいは、タイプ標本が多数含まれている。などの特徴があると。