まさみティー『黒鳶の聖者 1』

 新刊も出るしということで再読。
 同じ孤児院で育った幼なじみ4人組は勇者、聖騎士、賢者、聖者という高ランクジョブを獲得。将来を嘱望されていた。しかい、全員が回復魔法を覚えて、聖者ラセルはパーティから浮いて、追放されてしまう。
 失意のまま生まれ故郷のアドリアに戻るラセル。戻ってみると、アドリアにはダンジョンが出現していて、そこから現れたダンジョンスカーレットバットに襲撃されていた。ラセルは故郷を守るため、子供の頃から鍛錬していた剣に持ち替え、出会った魔道師シビラとともにダンジョンに挑む。


 一方、ラセルを追放した勇者パーティも、それぞれに思惑があり、そして、新たに加入した魔道師ケイティの怪しい動きもあって、徐々に暗雲が漂いはじめる。


 ラセルとシビラの掛け合いがいいなあ。無尽蔵の魔力という図抜けた資質を持つラセルとゲーム盤の外から見られるシビラの協同が、勇者パーティを崩そうという「魔王」たちの企みを潰すことになる。


 闇魔法の無双ぶりがすごいなあ。制限無しにバシバシ撃てれば、そりゃ圧倒的だよなあ。そして、無自覚聖者なラセルさん。


 追放した側の勇者パーティもいいなあ。自己顕示欲と自分の上を行くラセルに嫉妬して追放を目論んだ勇者ヴィンス、レベルが低いラセルを気遣ったジャネット、そして、ラセルを守るために聖騎士というジョブを授与されたのに、知らないうちにそのスキルでラセルを傷つけてしまったエミー。三者三様というか、すでにラセルハーレムでヴィンスがお邪魔虫だった感があるなあ。
 そして、仕方ないこととは言え聖者の回復魔法の性能に誰も気づいていなかった人々。そういう情報が伝えられないのか。