熊本県立美術館別棟展示室「よくわかる工芸のみかた:細川家の古美術鑑賞“入門編”」

 県立美術館本館そのものは工事で閉館中。別棟の細川コレクション展示室だけが開館している。4月あたりから回避していたから、半年ぶりくらいか。そりゃ、櫓の解体が終わってるわけだ。


 今回の展示は、「工芸の入門編」ということで、甲冑、調度品、能面の楽しみ方を解説する展示構成。甲冑は、細川家お得意の越中流スタイルの紹介。細かい部品に分けて展示しているのがおもしろい。

甲冑

 頭形兜。動きやすさと防御力を両立させたってところなのかね。下からのぞき込んでみると、わりと厚めにクッションが入れられているのが興味深い。中世の甲冑だと、頭のてっぺんは穴が開いてるんだよね。
 中世の様式を模した小星兜もかっこいいけど、下からのぞき込むと、真っ向から面喰らったときのショックがけっこう強そう。かっこよさでは中世の兜が勝るけど。







 籠手。前腕に突きを喰らったり、ガチで腕をぶった切られたりしない限りはこれで十分かなあ。脇の下は、鎖で守られている。ここ、ヨーロッパの板金鎧でも弱点とされているんだよね。



 佩楯。これ、後ろから膝を切られるのは防御しないのか。



 臑当。越中流は、軽量化重視で細長い金属板を鎖と紐でつないだもの。長刀で足元切られるくらいなら、これで守れるかな。突かれたら、隙間に入りそうだけど、全体に刺突はあんまり警戒してない感じがする。



 色々威大袖。「威」って「緒通し」なのね。越中流では省略されるけど、やっぱり大袖がついていてこそという感覚はある。色のコントラストがいいなあ。



 不動三尊像弦走韋。胸腹部に張り付けた絵韋。小札に腕や弓弦が引っかかるのを防ぐためらしい。


調度品

 大名家の嫁入り道具や儀礼用の華麗に装飾された食膳具、化粧道具、箪笥などが展示。こういう見せる道具はほんとに美しい。そして、ほとんど使用痕がない。


 青貝微塵秋草蒔絵提重。今回の展示のピカイチだなあ。青貝の砕いたのを全体に蒔いた上で、秋草を描く。青色に輝く姿が素晴らしい。






 養老図蒔絵煙草盆。能の演目の象徴となる背景や持ち物で、なにがあしらわれているのかを暗示する「留守模様」という手法が使われていて、「養老」を現しているらしい。




 菊慈童蒔絵箪笥。装飾すごいなあ。




能面

 解説が面白い。人を超えた超常的な力を、金彩色であらわす。金環が大きくなるほど力が強くなる。最強は白目がなく全部金色。色々とシチュエーションによって使い分けるのね。