熊本博物館「震災をふりかえる:大地とモノが語る熊本地震」

 タイトルの通り、熊本地震を回顧する展示。文化財レスキュー関連の展示と断層の剥ぎ取り標本など地学系の展示の二本立て。


 前半は、文化財レスキュー関連。被災した旧家や町家から回収され、整理修復を終えて返却された物、改めて市立博物館に寄贈された物、熊本市関係の施設から回収された文化財などが展示される。江戸時代から昭和初期に至る様々な物が蓄積されてきて、震災で流動を余儀なくされた。普通の家も、地震を機会に物を整理しているところ多いんだよな。
 第一展示室は、民家から回収された、絵画、食器、玩具、振り袖と草履など。個人蔵の物は撮影禁止だったので、寄贈された物だけパシャパシャと。
 ある程度の規模のある家は、こういうセットの食器を持っていたんだよね。有田焼の瑠璃釉金彩の奈良茶碗。



 榎津塗の膳。富合町で生産されていた塗り物だけど、今は絶えているのだそうだ。



 第二展示室は、熊本市関係の施設から回収された文化財と文書類。
 大天守地震によって展示ケースに雨漏りが生じ、展示品に水濡れ・カビなどの破損が発生した。あれだけ派手にぶっ壊れると、そりゃそうなるよなあ。波奈之丸の船館はよく無事だったなあ。細川刑部邸は、建物は破損したけど、収蔵品は無事だった。休館が続くので久しぶりの公開、と
 文書は常通寺所蔵の中世文書、津野田家文書と熊本大神宮の史料。前者は、庫裏が完全に潰れたけど、桐箱と桐箪笥の二重の防御で無傷だったという。後者は、近代、神社の運営史料など。関東大震災の時、全国で協同して義援金の拠出を行った記録が展示されている。



 水濡れによるカビ跡が黒く残る


 エンフィールド銃、銃剣、弾薬盒、弾薬箱、陣鍋。弾薬輸送の箱は、小さい方は小銃用、大きいのは砲弾用だそうで。




 薩軍が熊本城に撃ち込んだ降伏勧告の矢文。アクリルのケースに保護されて、破損はほとんどなし。



 龍驤丸書額。筆者城野静軒が、龍驤丸の銘板に自分の墨跡が採用されたけど、実際には似ても似つかなくなっていて、悔しいから記録しておくと書いた物。



 細川刑部家伝来の武具など。右の鎧は、忠興が初陣の特に着用したものだという。立物がなげえ。












 細川刑部家に伝わった武芸書。この、末尾、戦国時代の剣豪が並んでるけど、つまり、師匠の師弟関係を表示しているのかな。だいたい、あれこれを教えましたという内容。



 第三展示室は、地学系。主に、断層の剥ぎ取り標本を展示。10点ほどの剥ぎ取り標本が並ぶのは壮観だが、ぶっちゃけ、地層が読み取れない。場所によっては、どこが断層かも分からない。いや、説明を見ながら見つめれば、なんとなくわかるけど。現地写真と剥ぎ取り標本が左右逆というのも、素人にはつらいw
 明らかに途中で力尽きて、写真は二つしか撮ってない。


 旧長陽西部小学校の剥ぎ取り標本。下の方で、黒い地層がズレているのは分かる。



 こちらは、西原村の布田地区の断層の剥ぎ取り標本。2回ズレているのはわかるけど…



 こうしてみると、日奈久断層帯は、まだ動いていなくて、別のタイミングで揺れることが分かる、と。いつ動くか分からないというのが怖いな。油断できない、と。
 断層の分析と歴史的な地震記録を付き合わせると、いまいち符合していないような。


 とりあえず、図録は買ったので、勉強勉強。