鳥羽徹『天才王子の赤字国家再生術:そうだ、売国しよう 9』

 ウェイン大暴れ。
 4都市の連合国家ウルベスの代表アガタに招待されたウェイン。そこで、連合の統一への助力を頼まれる。しかし、アガタの動きに違和感を感じたウェインは、罠と承知で、貿易相手の確保のために暴走する。
 アガタの思惑は、孫カミルが北都アルティを利用しつつ、連合を解体しようと目論んでいるのを知り、密かに手助けをしていた。しかし、前巻の騒動で隣国の軍事介入が不可能になり、代わりの手助けとしてウェインを呼び込む。しかし、カミルはニニムに手を出してしまい、意趣返しをされて、連合維持に努力する羽目になる、と。


 血縁が強固に張り巡らされて、結婚すらも親族関係で苦労するウルベス。そこに、今までアガタが集めた資料を使って、ガンガン婚約を成立させ、優位にあった西都と南都の派閥を切り崩していくウェイン。培われてきたしがらみを顧慮しないからこその荒技で、ウルベスは大混乱。さらに、民衆反乱の噂を流して、買い占めた武器の高値売り抜けて金を稼ぐ。
 とどめは、南都と西都の代表の密通疑惑の噂。
 両都市の代表は実際に、秘密裏に愛し合うロミジュリ関係だったが、それを奇貨として駆け落ちしたという風評で代表の座を引きずり下ろされてしまう。


 で、決着の場、10年に一度の連合の継続を行う調印式で、東都のアガタの側近の立場をかなぐり捨てたカミルが、北都の代表として連合の解体を提言する。それを阻止するウェイン。命がけで国をなんとかしようとする人々の存在か。


 一方で、物語の中心となるフラム人問題も、情報開示。
 一神教を考えついたのはフラム人の「始祖」。彼は虐げられているフラム人を救うために、神を求めた。しかし、世界に明確な神は存在しないことを見いだした。そこで、彼は「神」を創造、フラム人を「天使」に位置づけた。しかし、そうやって宗教で結束して作られたフラム人の国では、今まで虐げられていたフラム人は、復讐の圧政と虐殺に走り、あっという間に崩壊した。
 さらに、それを参考にして大陸に覇を唱える宗教を創造したのはレベティア、と。


 あとは、フラーニャがウェインがどういう人間かについて疑問を持ち、行動を調べはじめる。結局、ウェインはニニムが抱えてる問題を解決した後はトンズラする気満々みたいだなあ。
 アガタの養子になるというのも、その布石か。