鳥羽徹『天才王子の赤字国家再生術:そうだ、売国しよう 8』

 そろそろ、風雲急を告げる感じかな。


 再び大陸西方側のお話。選聖侯が集まる選聖会議に再び招待されるウェイン。それは、新たな陰謀劇の始まりで…
 しかし、聖王シルヴェリオがカルドメリア以上にヤバそうな人物だな。


 新たな招待はレベティア教の中心カルドメリアによる、ウェインを西側に取り込み、東側の帝国と手切れさせるための挑戦だった。
 なかなか段階を踏んだ、そして、冷徹な陰謀だなあ。


 聖王の地位を目指す選聖侯の1人ティグリスはウェインとの同盟を結ぼうと持ちかてくる。そして、聖都でもう1人の同盟者を紹介しようとしたところで暗殺されてしまう。これによって、カルドメリアは都市を封鎖して情報を遮断すると同時に、ウェインと第三者を争わせる。で、他の選聖侯も含めて、注意がそちらに集中した隙に、カバリヌ王国の不平貴族を扇動して、帝国領ミールタースへ侵攻させ、それによって連合軍の組織を煽る。
 最後は、シュテイル侯を動かして、既成事実の戦争を発生させる。三段構えか。


 一方、帝国側では、バルドロシュの動きに不審さを感じたロウェルミナが動き、それを梃子にして選聖侯連合軍の構想をグダグダにするウェイン。さらに、帝国とパトゥーラの国交改善を軸に、ミールタース資本で西側諸国の余剰食糧を買い占め、パトゥーラに積み出すことで西側からの開戦を不可能にする。
 ウェインの側も大陸を股にかけた策謀で対抗する。


 一方、物語の結末に繋がる伏線も出てきたな。ナトラで活動するフラム人の一派が、なにやら秘匿してきたもの。そして、ニニムとあってなにか感じるものがあった聖王シルヴェリオと彼の言葉で動き出した聖王庁。「嵐を巻き起こす者は1人ではない。汝、心せよ、じきに災いが訪れる――」か。