プニッククルーズ/中村辰美『船体解剖図:ナゾに満ちた船の内部を大公開!』

 タイトルの通り、船の内部透視図の画集。著者名は共著じゃなくて、ハンドルネームと本名の併記のようだ。全体を4章に分けて、「乗るフネ」ではクルーズ客船や各種フェリー、「働くフネ」では輸送船やタグボートなど、「学ぶ・調べるフネ」では練習船や調査船、「見るフネ」では氷川丸や宗谷などの保存船を紹介。ちょうど世代交代の時期だったのか、2010年代後半から2020年代にリプレースされた客船やフェリーが多いなあ。


 第1章は「乗るフネ」ということで、フェリーやクルーズ客船を紹介。近海のフェリーだと10-15ノット程度、長距離フェリーだと20ノット以上くらいでばらけるようだ。そして、ジェットフォイル有明海オーシャンアロー、博多-釜山間のクイーンビートルのような高速船形は30-40ノットと圧倒的に早い。インキャット社のウェーブピアシング・カタマランって揺れが大きくて不評だったんだ。オーシャンアローは、内海だからこそ成り立っている、と。
 最近の近距離のフェリーは、デザインに凝って、乗る楽しみ、観光航路に活路を見いだしている。
 あとは、3代目ガリンコ号が、最高16ノットとなかなか高速なのが興味深い。船首のアルキメディアンスクリューを付けて、スピードが出そうにない船なのに、遭遇チャンスを逃さないためにスピードアップしたという。
 レストラン船がシンフォニーモデルナ、ロイヤルウイング、コンチェルトと3隻紹介されているのが印象深い。特に、最長老ロイヤルウイングおばあちゃん。


 第2章は「働くフネ」ということで、貨物船やタグボート、診療船など。貨物船も、RoRo船、コンテナ船、ばら積み船とバラエティに富む。大峰山丸はネットでもよく見かけるな。あとは、球形船首のコンテナ船「ながら」なども印象深い。
 働くフネとして、タグボート、診療船「済生丸」、遠洋マグロ漁船「第二十一磯前丸」と貨物船と毛色が違う船が紹介されているのが良い。磯前丸、なかなかかっこいいな。
 商船の類いだと、船員の生活の場は船橋構造物になるんだな。


 第3章は練習船と観測船。海技教育機構練習船「大成丸」、練習帆船「海王丸」、神奈川県立海洋科学高等学校の漁業実習船「湘南丸」、グローバル人材育成推進機構の小型帆船「みらいへ」、滋賀県のフローティングスクール「うみのこ」、JAMSTECの「かいめい」が紹介される。
 客船と違って公室の類いはあんまり要らないけど、運行要員以外の乗船者が増えることは変わりないので、居住スペースが増える。あとは、実習のために操舵室、機関制御室、通信室などが実習生も収容できるように広くなっていたり、教室や医務室が増設されたり。
 帆船は憧れだけど、高所恐怖症なのでマストに登るのが無理w


 最後の第4章は保存船舶ということで、氷川丸、宗谷、初代日本丸明治丸、八甲田丸、そしてかつて存在したステラポラリスが描かれる。初代日本丸は、保存場所であるドックを使って定期的に整備が行われ、出られなくなってしまっているが実際航海できるよう整備と登録が行われているというのが印象深い。