優木凜々『どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。 1』

 社会性がないために、言われるままに殺戮兵器を開発してた魔道具オタクが、自分が開発したものがどう使われているかを知り、後悔して、研究所が襲撃されたときに自殺同然にしんがりで火災に巻き込まれる。しかし、1000年後、前世の知識を持ったままで生まれ変わった彼女は、「お天道様の下を歩けないことはしない」と誓い、民生用魔道具の開発に邁進するようになる。
 そんな彼女も貴族の義務として学園に通うことに。魔道具研究の邪魔と授業以外はボイコットする勢いで、魔道具研究にリソースを割いていたが、王太子の婚約者コンスタンスから、スポンサーとしての付き合いも必要と諭され、学園の行事に参加しつつ、コンスタンスとの友情を深めていく。また、コンスタンスの兄オスカーとも仲を深めていく。
 しかし、3年生になって、王太子ナロウの周りに男爵令嬢プリシラが現れると暗雲が。彼女に入れ込んで、コンスタンスを遠ざけ、最後は卒業パーティでの断罪劇。冤罪での婚約破棄からの収監というとこで、主人公が介入。
 アリバイを証明し、冤罪と言うことを明らかにするが、王子に目を付けられてしまったため、ほとぼりが冷めるまで、国外に潜伏することにし、公爵家であるオスカーの手引きで国外に逃亡する。
 ここいらは、ウェブ連載とほぼ同様の流れかな。


 後半は、男装して薬師ココとして隣国で薬屋をやりながら魔道具の研究に熱中する悠々自適の生活を送るお話。冒険者が多い都市で、冒険者ギルド提携の薬屋の経営を任されつつ、ギルド所蔵の魔道具を研究する生活。
 魔道具研究の時間を捻出するために、早朝と昼過ぎだけの営業にして、価格も均一価格化して、営業の手間を極限まで減らす方向性。しかし、魔道具をいじりながら寝落ちするココは、客からたたき起こされる生活になって。不摂生な薬屋ってのがw


 後半部分はかなりエピソードが加筆されている。
 犬を拾ったり、その犬が受けていた毒を治療したら、それが近隣の冒険者に広がっている感染症の正体で大騒ぎになったり。水源が枯渇して水不足になったためもともとの水源だった女神像の魔道具をこっそり修理してみたり。
 で、コンシタンスのもとに手紙を送ったら、そこに男性の影があって、オスカーがパニックに陥ったり。


 一方、王宮でも不穏な空気が。ずっと、出される飲み物に違和感を感じる王弟殿下は、密かに調査に乗り出して。どんな毒物も判定できるって、それ、ココさんですよね…


 サクサクと楽しく読ませる作品。