早田結『どクズな家族と別れる方法:天才の姉は実はダメ女。無能と言われた妹は救国の魔導士だった』

 虐待されていた少女が、備わった魔法の才能で生き延び、自立を図るお話。奨学金制度が充実しているというか、貴族の育児放棄に厳しい制度じゃなかったら、生き延びられなかったかもなあ。
 稀少な付与魔導師ということで、保護対象になるわけだが。
 基本的には、ウェブに掲載された原作の本編部分を収録。幼少期、ヒロインが迫害されるきっかけとなった魔力の鑑定のエピソードが加筆されているけど、ここで国神の加護を見ているということは、「国神フィルター」に適ったことを示しているのかな。


 よく考えると、教師が教え子に手を出しているけど、そもそもこの国では教師は優良物件なんだよね。悪い奴が入りこんだら、酷いことになりそうだけど、しっぺ返しも大きいから紳士的に振舞うのかな。


 特待生として、稀少な付与魔導師として、ノエルは学園からの庇護の元、必死に勉強に励み、付与魔術の研鑽に励む。ノエルが魔力を付与した武器は、歴史的経緯から魔導師が少ない国で、騎士団による魔獣討伐に威力を発揮する。
 親友ができたり、チャラ男に翻弄されたりしながら、試験官も務めた教師ロジェとの仲を深めていく。


 一方で、アンゼルア王国は国神に魔導師を大事にすると誓った国であったのに、長年魔導師を蔑ろにして、数を減らしてしまっていた。その上、国王選びが国神の加護の最重要課題なのに、それを破りまくった国王によって、加護が取り上げられる手前にまで追い込まれていた。
 ノエルの恋人となっていたロジェは、実は第一王子で、国神の影響を強く受ける人物だった。他国に移住して、新婚生活を始めようとしていた二人だが、彼が国を捨てれば、終わると必死な人々によって、最終的に国王に選ばれることになる。虐待されていた、実家と絶縁した少女が王妃に成り上がることに。


 本編のあとは、後日談と番外編。
 後日談は、ノエルの実家ヴィオネ家を継いだ、第四王子サリエルのお話。というか、魔術を使った節約生活。魔力量は低いけど、操作が巧みなサリエルの魔法で、一人居残った執事の指導を受けながら、屋敷を再建して、土魔法による土壌の改善で稼ぐことに。
 一方で、口げんかから暴走して令嬢を殺してしまって、鉱山に投獄された姉ゼラフィは、一度の交接で妊娠。出産後に、サリエルたちが子供を引き取りに行く。あっという間に育児放棄するゼラフィ…
 番外編は書籍版書き下ろし。ノエルとロジェの恋愛系エピソード。なんだかんだ言って、本編では甘酸っぱい系エピソードは少なかったから、補完という奴か。