宙百『元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います! 1』

 途中まで読みかけた原作のウェブ連載がコミカライズを機会に削除されてしまったので、とりあえず、今や正典化したこちらを読んでみることに。
 とりあえず、ルルフィーナ付きのメイドのアイシャがかわいい。


 婚約破棄の前後をループする「悪役令嬢」ルルフィーナ。
 しかし、繰り返しの中、ある時、いつもと流れが違う巻き戻りで、子供時代に戻る。それは、人生を狂わせてしまった、従弟を死なせてしまった事故の日だった。それ以来、家族は崩壊し、親戚と疎遠になってしまった。
 で、予定通りルーヴェ伯爵家を訪れるルルフィーナ。キャッキャしているお母さん二人がかわいい。
 前回、赤子に蜂蜜を与えて死なせてしまったことから赤ん坊には与えなかったが、自分では離乳食や蜂蜜を味見してみたら、毒が含まれていてルルフィーナ自身が倒れてしまう。実は、乳母は敵対派閥が送り込んだ暗殺者で、ルルフィーナが起こした事故に見せかけて赤子を殺す事で、フィオレ侯爵家とルーヴェ伯爵家の関係を悪化させることが目的だった。1周目では、まんまとその策に引っかかっていた訳だ。


 目を離した隙にルルフィーナが倒れたということで、首にされそうになるアイシャ。それを知ったルルフィーナの、「ダメだったらダメなものはダメでダメなのよ!!」がかわいい。

 解雇を防ぐために、使用人が我儘に困ってると自虐ネタでおどすのがなんか楽しい。


 しばらくして、ルーヴェ伯爵と暗殺されかけた赤子のアレンが訪ねてくる。文字が読めたり、反応的にアレンはループしているっぽいなあ。文字が認識できても、脳みその発達具合ですぐ寝ちゃうのか。
 そして、父親に呼び出されたら、下に子供ができたので跡取りから外れて、婚約破棄されまくったドミニク王子と婚約しないかと提案されて。そりゃ、10代後半の人間が一桁に戻ったら、神童扱いだよね。で、大人になったらただの人…


 書き下ろしのおまけ小説がアイシャ視点で、ちょっとおもしろい。ルルフィーナの狷介さは、初代のお付きがいろいろ吹き込んだせいなのか。

 さかのぼること七代前。初代のお世話係がお嬢様に『絶世の美女と呼ばれるお母様に似なくて残念でしたね』とか『お祖母様は素晴らしい知性をお持ちで有名な……』とか「旦那様はそれはもうお優しくて手のかからないお子様で……』だの言い聞かせた。
 それらの情報が彼女の頭の中でぐちゃぐちゃにかき回された結果、自分は駄目なやつだという卑屈な心と名家の跡取りであるという自尊心が混ざり合い、生まれてしまった悲しき猛獣。それがルルフィーナお嬢様なのだった。



 とりあえず、アイシャちゃんかわいい。