藍田鳴『竜の子を産んだら離縁されたので森で隠居することにしました』

 処女懐胎か。
 商家で嫁いびりにあっていた貧乏貴族の娘シャーロット。ある日、竜の鱗を食べる夢を見て妊娠、竜の子供を産んだため、身一つで婚家を追い出されてしまう。
 竜の子供を育てるのは目立ってしまうため、王都の北の森の湖で暮らすことにした彼女は、森で採集した薬草を売ることで必要な物をまかなうことにする。そして、それが安定してきた頃、客がちょくちょく来るようになって。


 最初は、母親の病気を治したい少年が「北の森の魔女」なら治せるかも知れないとやって来て、竜の子ラスクの血を与える。
 さらには、竜を連れてくるようにという王命を受けた使者がやってきて、ラクスを連れて行こうとする。ならばと、自分も着いていくことにしたシャーロット。そこで、少年が王妃であったこと、そして、彼女の病が快癒した理由を探ってもはや安全ではない事を知らされる。
 さらには詳細な事情説明が行われ、建国から続く竜の関係とシャーロットの血の秘密が明かされる。
 村人に騙されて竜を討伐した戦士・魔法使い・シーフのパーティが、竜を弔うために建国した国がこの国で、戦士が国王、魔法使いが宰相となった。そして、シーフは公爵になったが、それは表舞台に立たず、100年に一度竜ファーヴニルを産み落とすために血脈を伝える存在だった。シャーロットは、その直系の孫であり、後継者に指名されていた。しかし、最後のワラキア公爵である祖母は、かなり後まで血脈を途絶えさせるつもりであったので、シャーロットへの伝承は不完全なものだった。


 結局、幼い竜ラクス=ファーヴニルを守るため、招かれない人間を入れない北の森に住み続け、護衛役の王弟にして騎士団長のジェラルドと同居することになる。