北里のえ『悪役令嬢はシングルマザーになりました:双子を引き取りましたが公爵様からの溺愛は想定外です』

 王太子から婚約破棄され、さらに実家のリオンヌ公爵家から勘当された主人公エステル。隣国に送られた彼女は、たまたま出会った食堂の店主に、用心棒を兼ねて雇われることに。そこで、日本食を出して繁盛店になり、順風満帆の平民生活を満喫する。しかし、恩人の店主は、双子を産んだところで産褥死してしまう。赤子を頼まれたエステルは、子供を育てつつ、食堂を切り盛りすることに集中する。
 しかし、双子が庶民には珍しい髪色であることが噂になり、実際にエステルの母国の公爵が、異母妹ではないかとお忍びでやってきて、確認。ほぼ確実に異母妹ということで、遺言で遺産があるので、その手続きにラファイエット公爵邸を訪れる。
 そこで、辺境で軍役を課されて鍛え直されていたエステルの元婚約者が脱走、廃太子になったことから、公爵家から次期国王が選定されることに。しかし、王太子になりたくないフレデリックから、平民と称するエステルが配偶者であれば王に推薦されにくいと、契約婚約を持ちかけられることになる。「契約婚約」といいながら、なにやら公爵様が甘々でw
 ここから、鈍いエステルと攻めるフレデリックのイチャイチャ展開。時々双子。


 で、次期国王の試問で王宮に滞在するうちに、やっぱり女王陛下にエステルがエステルであることがバレていて、エステルが王太女にふさわしいと言われることに。ついでに、女王の養子になって王女殿下になってしまう。
 そこに、脱走から戻ってきた廃太子ロランがやって来て、ちょっと人間性がマシになっていたので王位の押し付け対象にしたり、同窓会でヒドインが騒いだり、リオンヌ公爵家エステルの友人を誘拐したり。


 結局、ナルシスト王太子は、辺境の軍役で鍛えられて、真人間になって、王太子に返り咲きか。意外と、更生するざまぁ対象って少ないよなあ。というか、鍛えられて、無茶苦茶強くなっていたり。まあ、ヒドインにおだてられて、腐らされていた側面はあるような。
 エステルの実家、リオンヌ公爵家の傲慢な当主に、同じく傲慢な長兄、浮気三昧の母親はざまぁの対象に。傲慢で金払いが悪くて、密偵にあっさり見捨てられる人望のなさ。貴族令嬢をさらったあげく、王女と公爵家を狙ったら失脚不可避だよな。
 意外に、ヒドインこと、セシルが目立たないのが印象的。あれだけ騒ぎまくったのに、神殿で魔法の修行だけか。まあ、あそこまで努力嫌いだと、一生神殿から出られなさそうな感じが。


 エステルも転生悪役令嬢なんだよな。悪役令嬢が実直になったり、日本料理で食事処が繁盛したり、前世の結婚がフレデリックの嫉妬を煽ったり。一方、同じく転生者だったヒドインは、やっぱりヒドインで、その人間性からいろいろと見捨てられた感があるなあ。特に、母親の薔薇があっさり枯れたあたり。
 「娘」のココとミア、かわいいんだけど、後半、イチャイチャ展開になったところで、微妙に存在感が減っている感じが。


 そういえば、伯爵令嬢を誘拐して、エステルを誘い出すくだりで、ウェブ版ではエステルの弟の行動のシーンがあるけど、こちらではオミットなのか。
 一方で、ラストの書き下ろしのエステルの誕生日パーティのエピソードが追加。ケイトさん、「緑の指」の末裔だよねえ。ヒドイン、セシルの親戚なのか。