大正時代のエロ同人誌

祖父の遺品の中から、いくつか。
基本的に本や写真、紙類は私が引き取っているのだが、いろいろと変なものや興味深いものが出てくる。
その中でも、一番変な物が、以下に紹介する『両性読本』。
写真のように、一見、和装のまともな本に見えるのだが、開いてみるとガリ版か何かで印刷されている。時間が経っているので、読みにくい部分もある。


内容は、個人製作のエロ小説のようだ。奥付を信じるなら大正14年4月に「茶々の茶々公」なるペンネームの人物によって書かれたもの。
序文を転載すると、以下の通り。(旧字体新字体に変更)

第一巻は幸いにして諸君の御意に叶い是非第二巻を早くと教唆てられて上気せあがり、又筆を採る気になって他人の作やら自分の寝言やら五六編掻き集め夫れに下手の挿絵を捏ね混ぜて出来上がったのが本第二巻であります。
巻頭閨房要諦は少し固くなりましたが漸次に新婚旅行の害とか房事過度并に自慰の害とか生殖器の奇形及半陰陽の説明とか其他性病等に説き進む積りであります。
而して本巻より第三巻に亘りては主として姦通の原因とその予防法とを筆にしたのであります。
挿絵の中に佳致二十八境及び或る一夜は同一のものでありまして、丁度巻末の宵から朝迄の挿絵を謄写中に親切の知人より郵送されたので更に見出しを付し文字を少しく改めて転写挿入したのであります。
本巻の約七十枚百四十余頁印刷部数四十冊印刷製本茶々公自らして知友三十九名に差し上げることに致します。


四畳半編集所並びに印刷製本所にて
トツカピンを飲み乍ら五十六歳の老翁
茶々の茶々公誌

祖父は、この本が製作された頃には、まだ10代前半だったはずなので、祖父が製作者本人から入手したとは考えにくい。来歴は不明。祖父亡き後、永久に不明だろう。製作された40部のうち現在まで残っているのはこれだけだろうな。
内容は、性についての講釈とエロ小説。印刷がにじんで読みにくい上に、大昔のエロ小説では実用性は皆無。処分する気はないが、持っていてもどうしようもない。古本屋に売ったら、引き取ってくれるのかな?
ちなみに「トツカピン」とは、昔の強精剤だそうな。


他には、戦前から80年代あたりまでの写真がフィルム・プリント両方とも大量に出てきている。戦前の印画紙の袋まで残っているのだから、祖父の物持ちの良さは驚くばかり。


昭和10年前後の朱印帳松川二郎著『三都花街めぐり』など、戦前の旅行の記念品も残っていた。

あと、祖父の弟(戦時中に戦病死したらしい)が佐世保海兵団に所属していたらしく、機関兵の修業記念アルバムや海軍関係のアルバムが残っていた。

写真は今整理中だが、戦前のものはボロボロ、フィルムは張り付いていたり。どうしたらいいか、頭を抱えているところ。せっかくだから、きっちり保存したいのだが。


参考:資料・松川二郎 松川二郎の年譜と著作目録