橋口倫介『中世のコンスタンティノープル』

中世のコンスタンティノープル (講談社学術文庫)

中世のコンスタンティノープル (講談社学術文庫)

 全体をまともに読んだ本としては、一月半ぶりくらいか。ずっと、本棚においてあって読んでいなかった本。
 エッセイ集的な性格の本だと感じた。特に第一章の「三つのポルトレ」。
 以下、第二章がコンスタンティノープルの形成史、第三章がビザンツと周辺の諸民族の侵略の歴史、第四章がキリスト教の教理論争と政治の関わり、第五章が第四次十字軍のコンスタンティノープル征服、さらに市民の日常生活、オスマントルコによるビザンツ帝国の消滅と続く。
 興味深く感じたのは、三・四章。これだけ頻繁に侵略に晒される土地では、地域住民と国家の関係は、西欧や日本あたりの感覚とはだいぶ違うものになるのだろうなと感じる。あと、テマ制ってのは地方軍閥の存在を国家的に公認して制度内に取り込むものだったのかなとか妄想したり。
 あと、キリスト教の正統・異端を巡る教理論争とか、それがなぜあそこまで政治に影響したのかなどというのも、日本人にとっては非常に分かりにくいものだと思う。理論的な整合性を考えるなら、単性論の方がいいと思うのだが。どうも三位一体という概念は非常に分かりにくい。まあ、教理と実際の宗教的実践とは差があるものではあるが。とりあえず、本書を読んでいて、聖母マリア信仰への介入は命取りだったのはわかった。