宮本正興・松田素二編『新書アフリカ史』

新書アフリカ史 (講談社現代新書)

新書アフリカ史 (講談社現代新書)

 これも10年来の積読。出てすぐに買ったはずだから、本当に10年経ってる。600ページもある、新書らしからぬ大冊なので、なかなか読めなかったのも仕方ないか。実際、なかなか大変だった。
 しかし、それだけの得るもののある本ではある。アフリカの人類のダイナミズムには、正直しびれた。
 ここ数万年のサハラ砂漠の変動。特に、ここ5000年ほどの「緑のサハラ」から現状への激変。それに伴うバンツー系農耕民の大移動。大河川を通じた、地域の形成。サハラ砂漠、インド洋、大西洋を通じた外部世界との交流とそれによる変化。19世紀にいたるまで、人々が移動し、ダイナミックな変動が起きていた。
 史料的な制約からか、16世紀あたりから前の時代の記述・情報の占める部分が少ないのが、仕方ないとは言え、残念ではある。あと、19世紀からの植民地支配以降が半分以上を占めている。現在のアフリカ社会への甚大な影響を考えると当然ではあるのだが、バランス的にちょっと…
 第四部以降は、ヨーロッパ列強による征服と植民地支配、アフリカの人々の抵抗と独立、独立以降の混迷について、それぞれ一部ずつ配されている。しかし、愕然とするほどの、植民地支配の悪影響。特に思想・制度面の悪影響の深さ。そもそも、独立時に残された枠組みと現地の社会構造や思考様式との大きな不具合。そして、現在まで続く、適用された「開発政策」と現地社会との齟齬。近代ヨーロッパや日本の社会は、世界でも例外的な固定的な世界である。村落や都市が法人格を持ち、それを基礎として形成された、相対的に固定的な、近代の主権国家システムを、ユーラシア・アフリカの流動的な社会に単純に適用することに無理があるのではないか。また、近代農法が乾燥地での耕作に根本的に向いていない、よってそれを継続することで土壌を破壊してしまう問題もある。「アフリカ社会が育んできた知識と実践を、現代的文脈で再生・創造できるかどうか」が重要であると言う指摘には、賛同する。