考古学協会の蔵書寄贈凍結 臨時総会で反対上回る

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/101016/acd1010161427005-n1.htm
日本考古学協会、英国への蔵書寄贈取り消し


 いや、これどうするんだろう。協会蔵書を文化財と主張し、国内で保存すると決めたことになるわけで、考古学協会はずいぶん重い責務を抱え込むことになったのだが。今までできなかったことが、いまさらなんとかできるとは思えないし。これでどうしようもありませんでしたで、廃棄とかになったら、それこそ最悪の事態なのだが…
 日本考古学協会所蔵図書の寄贈問題と経費の負担についてで今後かかる費用について述べているけど、大半は「非民主的な運営を行った」理事に負担を負わせたとしても、市川考古博物館からの移送費と今後手続きの時間の分の倉庫代は当然協会の予算から出すことになるだろう。そうすると、それだけで数百万円。
 国内で一括引き取りを申し出る組織は存在しなかったわけだから、考古学協会は持参金を準備する必要がある。目録を準備するだけでも、人件費だけで数百万円が必要。最低賃金を650円で計算しても、一人一年120万ほどはする。院生や学生をこき使うにしても限度があるだろうし。施設整備に金を出す、自前で図書館を整備するとなれば、数億円から数10億円コース。自前の場合、さらに維持費が毎年数百万円ほどかかる。さらにその後、寄贈先での重複資料の処理という問題が出る。電子化や劣化した資料の保存処理なんてのも金がかかるわけで。資料を利用可能な状態で保存するにはずいぶんお金がかかるものだ。このご時世にどっからそんな金が出るのだろう。マスコミも、行政も、今は余裕がないし。企業から金を引っ張ってくるのも難しそう。
 既存の箱を利用するというのも結構厳しい。熊本では予算不足で県立博物館計画を凍結中だが、前もって集めた資料は免許センターの建物に押し込んである。聞いた話によると、収蔵スペースとして考慮された建物でないものを利用する場合は、維持管理に余計な手間がかかるそうな。少なくとも、開口が多い建物だと、埃が入り込むから、普段の維持管理に人手をとられる。ついでに言えば、書物を詰め込むとすれば、床の補強は必須。結構厳しい。
 こうやって考えると、セインズベリーの条件というのは破格だな。未整理の資料の山を全部お任せで処理してくれる上、いろいろと便宜を図ってくれる意思もあるようだし。実際、セインズベリーの方が資料が活きそう。これ以上の条件を準備するのは、難しいのではないだろうか。少なくとも、セインズベリーへの寄贈に反対投票をした人は、1万円ずつ集めて資金を積み立てておくべきだと思う。


 そう言えば、考古学協会の蔵書には昔の同人誌もあるのではという話。昔の個人出版と言えば、わら半紙にガリ版刷りが定番だよね。何十年もたっているとすれば、劣化が凄まじいことになっていそう。なかなか怖い。