瀬田勝哉『木の語る中世』

木の語る中世 (朝日選書)

木の語る中世 (朝日選書)

 中世における木と人間の関係を描いた書物。経済的な利用よりも、観念の面での扱いが主。史料の残存状況からしてもそうなるのだろうが。
 第一部が開発行為と森林の関係といったところか。仏の荘厳、あるいは神域としての森林と開発行為の軋轢。一部を神域として残すという慣習など。第二部、第三部は信仰と木の関係。奈良の春日山の枯槁とその背後にある春日社の「神話」の関係を解き明かした第二部は特に面白い。第三部は仏像の原材料としての霊木とそれから派生する神話。第四部は松や楠など、名前の中の木の観念。