竹内正浩『鉄道と日本軍』

鉄道と日本軍 (ちくま新書)

鉄道と日本軍 (ちくま新書)

 明治維新から日露戦争までの、近代の鉄道の歴史を、軍隊・戦争とのかかわりで述べている。鉄道の役割が拡大した日露戦争の記述が多い。鉄道の導入、西南戦争での新橋・横浜間の兵員輸送、幹線鉄道のルート選定と軍事的配慮、秩父事件の兵員輸送、日本軍の鉄道利用の増大、日清戦争での輸送など。幹線のルート選定時、陸軍が海上から攻撃を受けやすい東海道を嫌ったという話は有名な話だが、他は日清・日露の戦争時の話ぐらいしか知らなかった。
 日露戦争に関しては、兵員・物資の輸送、大陸での鉄道敷設、シベリア鉄道の話など。日清戦争日露戦争の輸送量の差について驚いているが、日清戦争時の北洋軍閥が5万程度の兵力であったことを考えると、当然差は出てくるだろうな。日清戦争の時には、相手よりも優勢な兵力を準備できたわけで、負ける要素はほとんどなかったということができる。それに比べると日露戦争は、最終的な動員能力でロシアには劣っていたわけで、そのあたりずいぶん危ない橋を渡った感がある。外交で決着がつけられなければ、最終的には押しつぶされていた可能性があるわけで。
 全体的に食い足りない感じもあるが、入門的な概観とすれば十分ではある。