「民間企業は図書館の運営には向かない」論のウソ - 図書館学徒未満

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 確かに、図書館を受託する企業には、委託を受けた図書館を運営するノウハウは蓄積されていると思う。ただ、なんというか、ここでの議論にはいまいち説得力を感じないところが。
 そもそも、図書館の運営を受託している企業は、TRCや丸善、そのほか書店が中心で、もともと図書館への書籍の納入などの業務を行っていて、「信用」を確立している企業が多い。その点で、この記事での議論の公共事業の受託による非金銭的な価値というのは、あまり説得的でないように思う。
 結局のところ、多くの図書館では、司書の非正規化などによる人件費の切り下げで収益を出しているパターンが多いのではないだろうか。
 あと、最初に交通エネルギー通信などの公共的な企業を例に出して、必ずしも公共事業と民間事業の相性は悪くないと述べているが、図書館が直接消費者からサービス費用を徴収できないという特殊性を考えると、あまり良い例えとは思えない。


 まあ、一般論としての図書館の民間委託反対論があまり説得力を持たないから、あちこちで民営化が進んでしまうのだろうけど。ついでに、公営でも非正規職員への依存度が高まっているから、なおさら説得力がないというか。日常接する図書館が全部直営だから、どうにもピンとこない。一度、熊本駅前の図書館に行ってみなくてはいけないな。
 館の運営ノウハウはともかくとして、人的ネットワークの核として、文化活動の核になるという部分でのノウハウの蓄積が民間企業には進んでいるのだろうか。公営では、そのあたりが勝手にできる部分があるが、期間が限られ、非正規職員主体の受託館では難しそうだと思うのだが。非正規職員中心だと、そういう人間関係ネットワーク築きにくそうだし。


関連:民間企業による図書館の運営について・各論 - 図書館学徒未満


「『民間企業は図書館の運営には向かない』論のウソ」を読んで: 日々記―へっぽこライブラリアンの日常―
 文化活動において、「伝統」「蓄積」というのは大事なんだよなあ。そこのところの評価を、民間委託された企業はまだされていないというのはある。あと、司書の「専門性」の話。