【日本の場合】続・著作権保護が実は本の消失に手を貸しているんじゃ… - 日比嘉高研究室

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 著作権の保護期間が著作の公開を阻んでいるという指摘に関連して、日本ではどうなのかの計量的研究を紹介。ごく少数の経済的価値の高い著作に関しては利益の増進に役立つが、大半の著作の忘却に手を貸しているというのは、アメリカと同様。
 結局のところ、文化の発展という観点からは、保護期間の延長は有害無実ということ。


 引用されている中裕樹・田中辰夫の研究が興味深い。孫引きすると

OECD30ヶ国、1991 年から2006 年のデータを分析しところ、Png and Wang (2006)が導いた保護期間延長は映画製作数を増やすという結果は、頑健とは言えない。より当てはまりのよい式や製作本数を人口で割って基準化した回帰式では、保護期間延長の効果は見出せないからである。したがって、著作権保護期間延長をすることで、創作者にとって新たな創造の意欲が高まり、映画製作数が増加するという命題の論拠はまだ得られていないと考えるべきである。

 著作権保護期間の延長が創作意欲を増すという主張には根拠がないと指摘。まあ、著作物って、収入として大事なのは公開して短い期間だよなあ。その間に投資分を回収し、個人作品なら生活費を稼がなければならない。創作意欲を増進するには、短期的な作者の取り分を増やした方がよかろうな。