講演会「福井県の恐竜化石発掘調査から見えてきたもの」

 福井県立恐竜博物館の特別館長である東洋一氏による講演。20年以上の、継続的な発掘調査による、手取層群から産出する生物群から見えてきたこと。
 しかし、福井県の恐竜化石の発掘研究に対するリソースの投入の仕方はすごいな。勝山の発掘地は、掘削量がものすごい。そもそも、複数の古生物学者を抱えている時点で、日本国内ではたいがいの大学よりも、陣容が厚いんじゃなかろうか。化石を研究するために、CTスキャンの装置を導入しているとか、国立博物館並みの設備投資。


 ここ26年ほどの調査活動による資料の蓄積、そして中国やモンゴルでの発掘・研究の進展で、ヨーロッパやアメリカの恐竜群との比較検討が可能になり、恐竜のグローバルな生物地理が解明されるようになったということなのかな。東アジアとヨーロッパが比較できるようになった今、中間の中央アジア・ロシアの研究が重要になってくると思うが、そのあたりは政治情勢が不安定で、手を出しにくいのが現状だと。
 ジュラ紀には、東アジア地域とヨーロッパや北米は、海で隔てられていて、東アジアには独自の恐竜群が存在した。しかし、一億年前ごろに、ヨーロッパと東アジアが陸でつながり、ヨーロッパや北米で進化した恐竜群が流入白亜紀には、ティタノサウルス形類や、ティラノサウルス類、イグアノドン類などが、分化しつつ、共有されたと。


 いろいろな研究中のエピソードが興味深い。
 小型獣脚類の脳函の化石が発掘され、それをCTスキャンで解析したところ、神経などの姿が復元できるようになった。三半規管の形から、恐竜が前かがみの、鳥のような姿勢をとっていたことがわかった。
 鳥の骨格化石が見つかったが、クリーニングは物理的に難しいので、CTスキャンで化石の形を明らかにして、3Dプリンタで再現。それを研究しようという方向に動いているとか。
 鳥の卵の破片の化石が見つかったが、これを「鳥類」の卵と断定した根拠。恐竜の卵は、断面が二層構造なのに対し、鳥は三層。見つかった化石も三層であること。表面の模様や殻の厚さなどを勘案したと。で、鳥の卵としては、現状ではかなり遡った最古の例になるそうな。
 あるいは、鳥が東アジアで出現した可能性。被子植物の出現によって、共生する昆虫類も多様化。飛翔する昆虫を捕らえるために、保温のための羽毛が、飛翔のための羽毛へと進化した。で、最古の被子植物が、中国から発見されている。また、肉食恐竜は、大型の肉食恐竜、羽毛を変化させ鳥へと発展していった系統、羽毛を持ちつつ雑食性の方向に進化した、三つのカテゴリーに分化していったとか。


 ラストは、長崎の三ツ瀬層の話。調査が進んで、次々と恐竜の化石が発見されつつあるが、これは山東省の恐竜群と共通性があること。ティラノサウルスの歯の化石が、非常に新しい時代のもので、意義が大きいとか。いままで、日本国内で発見された「ティラノサウルス類」の歯の化石は、ティラノサウルス上科に属する比較的原始的な、古い時代のものであった。しかし、長崎の歯の化石は、最終段階に属するものに近いと。


 しかし、恐竜の話も、分岐分析とかは、歯が立つ気がしねえ。
 あと、パワーポイントかレジュメがあれば、ここでまとめなおすのも楽だったかな。