「「売れる犬」ゆがんだ繁殖:遺伝性の病気日本で突出」『朝日新聞』15/5/30

 そもそも、日本の生体流通や飼育の規制がゆるすぎるんだよな。もっと、ガッチリと首根っこを押さえるべきだと思う。ついでに、外来生物の輸入も、きっちりと押さえないと。意識が低くて、自浄作用がないなら、資格制度が登録審査制度を導入するしかないんじゃね。
 そもそも、生き物なんだから、子犬を展示販売する形式に無理があると思う。
 まあ、日本のペット文化の未熟さも、大いに関係があるようだけどね。


 後半の、劣悪環境のペットショップが10年放置されたのは、やはり役所がめんどくさかったからだろうな。行政処分を行うとなると、書類の数が増えそうだし。つーか、大量の動物をどうするかで、死ぬるな…
 当該の店は熱帯魚の販売がメインのようだが、こういう店から犬や猫を買う人間がどれだけいるんだろうな。仕入れたけど、売れなくて、ネグレクトみたいな感じだったのかね。
 検索をかけてみると、(悪い意味で)有名な店だったようだ。サイトが山ほど。

 犬や猫にも、遺伝子が原因の病気がある。実は日本は、世界でも目立って遺伝性疾患の犬が多いという。検査技術の向上で病気の発生を減らせるようになったのに、特定の犬種に人気が集中する風潮と繁殖業者(ブリーダー)の意識の低さが、望ましくない状況を生みだしている。


 業者の意識向上がカギ
 名古屋市内で5月20日、「ペットプラス」を全国展開するペットショップ大手AHBの主催で、遺伝性疾患などに関するシンポジウムが開かれた。同社診療部の市橋和幸・獣医師がブリーダーらを前に、失明につながる病気「進行性網膜萎縮症(PRA)」を例に取って「発症犬は繁殖に用いるべきではない」などと説明した。
 原因遺伝子が一つに特定された犬の病気は5月現在、193ある。原因遺伝子を持っていても見かけは健康で発症しない「保因犬」同士の繁殖を行うと、4分の1の確率で病気を発症する犬が産まれる。一方で、犬の全遺伝子の配列はすでに解読されており、保因犬を見つけるための遺伝子検査も約50の病気で可能になった。
 ブリーダーが注意をすれば原因遺伝子を受け継ぐ犬を減らせる環境は整ったはずだが、AHBの研究所長も務める筒井敏彦・日本獣医生命科学大名誉教授は「大学付属病院で犬の遺伝性疾患を長く見てきた。『日本は世界でも突出して犬の遺伝子疾患が多い』と言われる」と話す。
 その背景として、新庄動物病院(奈良県)の今本成樹院長はブリーダーが抱える問題を指摘する。
 ミニチュアダックスフントのなかでも白い毛が交じった「ダッフル」という種類がはやり、高値で取引されていたことがあるが、今本氏は「この毛色になる遺伝子を持つ犬同士の交配では死産や小眼球症、難聴になる個体が確認されている。(ブリーダーは)はやりの毛色ではなく、まず犬の健康を求めてほしい」と話す。
 鹿児島大の大和修教授は、プードル、チワワ、ダックスフント、柴犬など特定の犬種に人気が集中する日本独特のペット事情にも原因があるとみる。
 「特定の犬種がメディア報道で爆発的に流行し、短期間で可能な限り多くの個体を生産する努力が払われる。そんな土壌が遺伝性疾患を顕在化させ、新たに作りだす要因になっていると推測される」
 大和教授によると、日本で注意が必要な主要な犬の遺伝性疾患は表の六つ。たとえばウェルシュコーギーでは、10歳前後になると変性性脊髄症(DM)と呼ばれる病気を発症する可能性がある個体が約48%もいる。
 ペット産業側も動き出してはいる。AHBは年間のべ約1千人の契約ブリーダーらに遺伝性疾患の情報提供を行っている。ペッツファーストは「販売した子犬が発症した場合、ブリーダーに連絡して繁殖ラインから外させるなどの対応をしている。購入者には、診療費の一部負担や提携病院を紹介している」(正宗伸麻社長)。同じくペットショップ大手のコジマも、入荷後の全頭検査で異常や発症がわかった場合、ブリーダーに繁殖の自粛を促すなどしている。
 大和教授は「犬の遺伝性疾患は状況改善が可能だ。まずブリーダーの意識向上を図る必要がある」と話している。  (太田匡彦)


東京・昭島のペット店都は業務停止命じたが:ずさん管理10年「放置」
 東京都昭島市のペットショップ「パピオン熱帯魚」が5月20日、東京都に「犬猫等販売業廃止届出書」を提出し、犬と猫の販売を取りやめた。このショップは10年以上も前から、ペットの管理状況を問題視されてきたが、都はこの問題を実質的に放置してきた。
 今年に入ってパピオンの内情を確認した日本動物福祉協会(JAWS)調査員の町屋奈・獣医師は「ケガをしている猫が放置されていた。壁一面に置かれた水槽のために日中でも自然光が入らず、犬猫ともに爪は伸び放題。長期間、ネグレクト型の動物虐待が行われていたことは明らか」と話す。
 都は今年4月、動物愛護法に基づいて1ヵ月間の業務停止命令をパピオンに出している。担当者は「昨年5月下旬から苦情が寄せられるようになったのが処分の端緒」とした。
 しかし都は、ずっと以前から実態を把握していた。都に残っている記録では07〜13年度に口頭指導を計26回行っているのに加え、文書指導も1回実施している。指導内容には、今回の業務停止命令の根拠となった、飼養施設の大きさや構造についても含まれていたという。
 パピオンは12年度に動物取扱業の登録を更新しているが、その前年度に6度の口頭指導、12年度にも8度の口頭指導などが行われていた事実もある。それでも都は「登録基準に適合していたから登録を更新した」(原口直美・環境衛生事業推進担当課長)とする。
 JAWSが今年、確認できた生後90日以上の犬8匹は、狂犬病予防注射が打たれておらず、畜犬登録もされていなかった。
 これだけの問題業者がなぜ長く営業を続けてこられたのか。原口課長は「指導を行った都度、改善があったことは確かだ。良くなってもまた繰り返し悪くなっただけ。放置してきたわけではない」と主張する。
 だがペット法学会副理事長の吉田真澄・弁護士は、動物愛護法がここ10年で2度も改正され、業者への規制強化が進んできたことを踏まえ、こう話す。「適切なタイミングで対応をしてこなかった都の姿勢には、大きな問題があると言わざるをえない。行政の重い腰をあげさせやすくするためにも、施設の大きさなどについて具体的な数値規制を検討する必要がある」