『ミリタリークラシックス』Vol.57

 春に買って、そのまま積んでいたもの。前半分だけ読んでいたのを、このほど、ぜんぶ読破。第一特集は九五式軽戦車と特二式内火艇、第二特集はイギリス戦艦クイーン・エリザベス級。あとは、細々とコラム。


 前半は、九五式軽戦車。小柄で架橋能力に欠ける日本軍に便利であったことと、機械的信頼性が高かったことが、成功の要因と。騎兵部隊の機動戦車として構想されたので、特に対戦車火力の大きくない中国軍相手には活躍できたが、火力戦に巻き込まれたノモンハンや太平洋のアメリカ軍には限界を露呈したと。場所によっては、小銃で打ち抜かれる装甲じゃ、戦車の相手は厳しいわな。
 しかし、日本の戦車って、基本的に軽いなあ。九七式中戦車が、15トン弱って、M3スチュアートと略同等でしかない。同級の戦車って、イギリスの巡行戦車かソ連のBTシリーズしかないんだよな。ドイツの三号、四号戦車も20トン級だし。
 日本軍の戦車開発の歴史も興味深い。最初は、多砲塔戦車を主力にしたかったが、成功しなかったので、ダウングレードした歩兵支援用戦車が「軽戦車」となった。そこに、もともと「装甲車」と呼ばれていた騎兵戦車が割り込んで、重中軽のカテゴリーになったと。騎兵科と歩兵科の対立、さらに大戦中期に火力増強が図られると機甲科と砲兵科で縄張り争い。
 特二式内火艇、デザインがいいな。フロートがなくても、50センチほど水面に出るデザインだったというのが、興味深い。そういえば、フロートを切離さなければ、バズーカに耐えられたんじゃね。
 太平洋の島嶼での逆上陸を狙って設計されたが、九五式軽戦車相当の車両では、アメリカ軍相手の火力戦では、全く無力だったと。
 九五式戦車と同時期、同格の軽戦車との比較があるけど、大半の戦車に撃ち負けそうなのが。戦車は、何は無くとも火力なんだなというのが、T-26で分かる。あと、チェコの35t戦車のバランスの良さが印象的。


 第二特集は、第一次世界大戦でもっともバランスの取れたイギリス戦艦で、かつ、第二次世界大戦でもっとも活躍したイギリス戦艦であるクイーン・エリザベス級戦艦の話。軍艦にとって、スピードが速いってのは、大事なんだな。
 あと、第二次改装後のウォースパイトとか、クイーン・エリザベスとか、ヴァリアントの塔型艦橋、ちょっとかっこ悪すぎやしませんかね。大改造を受けなかったバーラム、マレーヤの方が好き。
 QE級は、本当に東奔西走しているな。キング・ジョージ五世級はともかくとして、ネルソン級とか、R級が鈍足で使いにくかったのは大きかったのだろうな。1942年ごろの東地中海が、英海軍にとって厳しい戦いだったのだな。同型艦中三隻が、撃沈ないし大破着底しているという。軽巡も大量に沈められているし。あと、フリッツXの威力。もう一発命中するか、追撃があったら、ウォースパイトは沈んでいたんじゃなかろうか。


 コラムは、いろいろ。第一次世界大戦中の推進型戦闘機とか、フランス・イタリア国境で大苦戦したイタリア軍とか、軽巡天龍の活躍とか。長門型戦艦の速力、アメリカでタービン翼を切ったので、バレバレだったというのは、納得できる話だな。
 コルト・ガバメントの話も興味深い。今でも、海兵隊では制式なのか。息の長いピストルだな。というか、基本的な部分では、20世紀初頭に完成していたということか。