西澤丞『MEGA-SHIP:日本の現場[造船篇]』

 体調悪し。土曜日にめまいで寝込んでから、どうも、体が重い。というか、めちゃくちゃ寝まくってる。で、生活リズムが壊滅するという悪循環。出かけるつもりが、引きこもりモード。


MEGA-SHIP (日本の現場「造船篇」)

MEGA-SHIP (日本の現場「造船篇」)

 で、本題の本書。造船の現場を、研究開発から、鋼材の切り抜き、溶接、ブロックの組み立て、船体への結合、艤装と、完成までの一連の流れを切り取った写真集。
 部材の切り抜きあたり、なかなか見られないところだけに面白い。こういうところは、かなり自動化が進んでいるのだな。
 しかし、こうしてみると、船体の組み立てって、なんか無茶苦茶でかいペーパークラフトみたいな感じがするな。そう考えると、とんでもない精度だなあ。溶接によるイモ付けで、ダボもなく組み立てていって、アレだけ巨大な構造物でセンチ単位の誤差しか許容されないわけで。手元で作るプラモやペパクラの工作精度で苦労しているレベルの人間からすると、はわーという声しか出てこない。


 実験用の水槽で、日々、船型の開発が行われているのだな。
 電磁石のクレーンで鋼材を持ち上げて、無駄が出ないように部材を切り抜き。自動機械だけでなく、小さなところは人力。細長い部材は、複数のバーナーで一気に切り取り。プレスとぎょう鉄で、曲線に部材を曲げ加工。で、溶接で部材を接着していって、だんだん大きくしていく。部材を組み合わせてブロックを建造。それを、クレーンでドックに運んで、船体を組み立てていく。流れはわかっても、なんか、スケールがでかすぎて、こう、何とも言えないものがあるな。
 船舶用のディーゼルエンジンのクソでかさも、すごい。人間が何人も入りそうなピストンのシリンダー。ビルのようなエンジン。大型船舶の低速ディーゼルだと、ピストンは、垂直に一本づつならぶのだな。直結ということは、ピストンの動きはかなり、ゆっくりそうだけど。
 あと、同じドックで複数の船を建造する場合、次の船は、どうやって動かしているんだろう。というか、クソ重そうなブロックだの、その前の段階の部材だのも、どうやって動かしているのやら。LNGタンクを搭載するところの連続写真が、すごく良い。
 あとは、スクリュープロペラの組みつけも、そもそも、シャフトをどう入れるのだろうかとか。かなりの精度が必要そうだけど。
 なんか、すごいなあ。というか、ブロック建造って、加工技術がないところが作ったら、配管とかで、泣きを見そうだけど。どうやって、技術の蓄積が行われたのだろうか。


 ラストのインタビューがおもしろい。
 巨大なタンカーのカーブの位置が20センチ狂っただけで、性能に大きな差が出てくるとか。様々な要素のトレードオフ。先日、真ん中から折れて沈んだMOLコンフォートなんかは、巨大化に対して部材の強度設定を見誤ったってことなんだろうなあ。
 あとは、多くの人がかかわる現場だけに、段取りの大事さとか。艤装の人へのインタビューに出てくる、シャフトとエンジンの位置関係も興味深い。エンジンの位置決めは、シャフトを基準に行われる。100トン以上のものを、1/100ミリ単位で動かすって…


 写真集の撮影に協力した現場は、川崎重工の坂出造船工場、ジャパンマリンユナイテッドの有明と呉の両事業所、そしてスクリュープロペラのナカシマプロペラ株式会社。ゲスト出演で、深田サルベージのクレーン船、駿河船橋部分の搭載作業をしているところも。


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 舶用エンジン、海外メーカーのものをライセンス生産しているのは、海外でも整備しやすいように共通化する必要があるからなのか。で、MANやWin-GDがデファクトスタンダードになる。MAN社とか、自分ではどの程度、舶用エンジンの生産を行っているのだろうか。
 つーか、ヴァルチラの舶用エンジン部門は、中国資本が入って、ブランドがWin-GDになってるのか。
 あとは、大型船のディーゼルエンジンで、V型とかはないのか。