『地下をゆく』

 イカロスムック。一度借りて読んだのをすっぱりと忘れていて、また借りてきた。まあ、二度読んだからダメということもないわけだが。
 タイトルの通り、地下空間を取り上げたムック。地下鉄、地下施設、地下放水路、鉱山、地下街などなど、人間が入り込める地下空間全般。逆に言えば、なんか、構成が雑多で、それぞれのテーマでは、深みが足りない感じがある。
 やっぱ、鉱山関係がおもしろいなあ。大谷石釧路コールマイン、土橋鉱山。


 第一章は、地下空間のレポート。首都圏外郭放水路、下北沢近辺の小田急地下工事、理研仁科加速器研究センター、大谷石を採掘した大谷資料館、国会図書館地下書庫、黒部川第四発電所、鍾乳洞など。
 地下のパルテノンこと、首都圏外郭放水路がすごいなあ。というか、よくもまあ、こんだけのもの作ったよなあというか。ある意味、都市計画の大失敗のしりぬぐい感もあるがw
 理研のRIビームファクトリーがかっこいい。あと、大谷石の採掘場が迫力。


 第二章は、都市の地下空間ということで、地下鉄建設の歴史、地下街ルポ、渋谷川の付け替えなど。熊本にいると、この種の地下施設とは縁がないな。地下水の保全が優先のため、デパートの地下街とか、通町筋の地下道くらいしか思いつかない。梅田で毎回迷っていたのは、懐かしい思い出か。


 第三章は、図解ということで、新宿の地下をモリナガ・ヨウのイラストで図解したり、東京の上下水3Dマップを紹介したり。後者は衝撃的だな。上水道は加圧するから地形に拘束されないが、下水道は自然流加のため地形がくっきりと見える。関連して、下水道がいろいろと紹介されているけど、結構、フォトジェニックなところがあるのだな。生活排水を流さない下水は、臭くないのか。
 第四章は、幻の地下空間というタイトルで、松代大本営の地下壕群と地下鉄廃駅。よく考えると、松代大本営、こんなことに労働力を突っ込んだもんだなあ。そんなリソースがあったら、農業労働に投入したほうが良かったんじゃ…
 第五章は各種地下空間リスト。地下なら、何でもありのごった煮感。


 やはり、鉱山関係がおもしろいなあ。周辺の地図とか、鉱山名を検索してみると、いろいろと出てくる。
 第三章では、釧路コールマインの坑道地図が紹介。かつての太平洋炭礦を規模縮小して、存続している、日本唯一の坑道掘り炭田。緩傾斜の鉱脈だから、現在も生き残っている。それでも、海面下200-300メートルの場所か。やっぱ、メカがかっこいい。そして、やっぱり爆発が怖いと。
 そういえば、ここ、専用鉄道が廃止になるんだっけ。
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 第四章で出てくる、ろう石などを採掘する岡山県備前市の土橋鉱山も興味深い。ここらあたり、耐火煉瓦の製造会社などが集中しているが、ここの山で採掘されるろう石がが原料で、産業集積が発達したらしい。土橋鉱山のほかに、大平鉱山が露天掘りで採掘を行っている
 釧路コールマインが可燃物で、火に対する警戒感が強いのに対して、こちらは発破での採掘がおこなわれているのが差か。
 そういえば、ダッシュ島の反射炉の耐火煉瓦も、ここいらから供給されているのではないだろうか。
 ここの鉱山、広報に積極的らしく、自社ブログも存在。あとは、備前市のサイト内のこの地域の耐火れんが産業の草分けの人の略伝とか。
www.tsuchihashi-kozan.co.jp
www.city.bizen.okayama.jp
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