幸田文『崩れ』

崩れ (講談社文庫)

崩れ (講談社文庫)

崩れ

崩れ

 土砂災害系文学と言えばコレと言うくらい名の通っている作品だが、今まで読んだことがなかったので。大谷崩れを見てから、崩落地形に魅入られて、あちこちの崩落地形を見てあるいた雑誌連載のエッセイ。安倍川の大谷崩れから始まって、富士山の大沢崩れ、日光男体山の薙、長野県の稗田崩れなど、割と著名な崩落地を、案内付きで見学。やはり、富山の鳶山崩れは別格感があるなあ。
 巨大な石が、現在進行形で動いていく状況。それがちゃんと記録されている。52キロとはいえ、人一人を軽々と担いでいく力持ち。本当に、ガンガンと崩れていくのだな。だから、植物が生えない。育つ前に崩れる・埋まる。
 あと、1976-77年あたりの取材の本だから、1984年の長野県西部地震による御嶽崩れはまだ起きていないのか。


 末尾近くの鹿児島桜島の章も印象深い。川が、土石流の通り道として、がっつり固められている状況、地理院地図の1970年代と最新の航空写真を見比べると、鮮明に見える。どこも、がっつり、護岸と砂防ダムで固められている。さらに、人間活動の前線が後退している姿も含めて、時代の流れを感じる。


 大規模崩落以外では、静岡の大崩れ海岸、東京の住宅地の土砂崩れ経験、有珠山1977-8年噴火、浅間山などが取り上げられる。こうしてみると、土砂災害って、大小いろいろあるものだ。
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