瀬名堯彦『イギリス海軍の護衛空母:船団護送に長けた商戦改造の空母』

 タイトルの通り、ドイツのUボートや航空機による通商破壊作戦に対抗して、対潜哨戒・攻撃、経空脅威の撃退に任じた改装空母群の紹介。実際には、護衛空母って、微妙に「間に合ってない兵器」感があるけど。むしろ、陸上哨戒機の充実のほうが、有効に機能した感じがする。とどめを刺すというか、脅威の低下には貢献した感じがあるけど。つーか、全巻これ、リストといった感じの本で、個々の護衛空母について覚えきれない。
 1943年前半までに実戦に出た感は、相応に活躍しているけど、それ以降だと、輸送空母だの、訓練用だので、余剰艦扱いって感じが。あと、1944年ごろになると、地中海方面での連合軍の反攻、上陸作戦やギリシャ沿岸のドイツ軍戦力の撃破に投入されたり、インド洋方面でインドネシア・マレーシア方面の作戦に従事したり。護衛の仕事に余裕が出てきたのが感じられる。
 面白いのが、最終的にイギリスで使われた艦のほとんどが、返還後、商船に改造されて、60年代から70年代あたりまで使われていること。飛行甲板やら、航空用の設備の撤去、上構の作り直しとか、結構手間がかかりそうだけど、一から船を作るより安いってことなのかな。航行に必要な設備はもうできているし。戦後の姿は、MAC船のエンパイア・マッカラムの後身、ドリス・クラニーズの写真が掲載されているだけだが、これも、割と船橋なんかは、そのまま再利用されている感がある。上構の不自然な平らさが、風情に満ちている。


 本格的な護衛空母のほかに、商船に無理やりカタパルトを搭載したCAM船、簡易な航空艤装を施したMAC船などが紹介される。後者は、「間に合っていない」感じで、活躍の場は少ない。ソードフィッシュ4機搭載がやっとというのは、しんどいなあ。
 CAM船のほうは、Fw-200などドイツ軍の航空機による攻撃が割と盛んだった時期に出現しただけに、それなりに活躍している。しかし、陸上機のハリケーンを無理やり積んで、搭載機は発艦後は陸上基地に着陸するか、海上に不時着するしかない、一回のみの使い捨て。それだけに、一度射出した後、翌日あたりに、再び航空攻撃を受けると、なすすべもなく撃沈されるしかないという。一度とはいえ、戦闘機を発射できる船とか、優先的に狙われるだろうしなあ。


 戦前には、大型客船を使った改装空母の計画があったけど、船が足りなくなって、かつ、大西洋では空母の所用がそれほどではなかったということで、実現しなかった。クイーン・エリザベスとか、空母に改造したら、立派に活躍した。というか、軽空母よりよっぽど性能良さそうだけど、兵員輸送船としての所要が優先されたわけか。