熊本県立美術館「美術館コレクション:熊本地震と文化財/光は手元にあり」

 県立美術館二階の展示室で開催されている企画展。展示室三室中、二室が「熊本地震文化財」、最後の一室が「光は手元にあり」という配分。

熊本地震文化財

 前者「熊本地震文化財」は、熊本地震で破損した文化財の復旧状況の紹介や文化財レスキュー活動で発見された史料などの紹介。県立美術館内で、相当の破損を引き起こしているのが重いなあ。屏風類のラックから、屏風が飛び出して、かなり破損したとか、被害金額的にはかなりのものだったらしい。地震を考慮した収蔵庫のデザインを考える必要があるわけだ。しかし、耐震性を考慮するとスペース効率や取り出しが不便になりそうでもあるし。なかなか難しい。あと、破損した文化財に関しては、破損状況の写真でもあると、良かったのではなかろうか。
 最初は、肥後国における地震の歴史。麦島城が崩壊した17世紀の地震や明治熊本地震に関する資料が紹介される。しかし、立派に大地震の既往があり、布田川断層帯や日奈久断層帯といった一級のやばい断層があることは、知っている人は知っていたのに、全くそれが一般に理解されていなかったというのが、災害対策の難しさを感じさせるな。無関心の壁を貫くのは、不可能だろう。
 麦島城から出土した、崩落した櫓、一部は保存処置を施されているのだな。戸板が出品されていた。


 続いては、熊本地震で破損した寺院や県立美術館所蔵の文化財類の紹介。さらに、破損した熊本城や寺院のような建築物とそれに関する資料の紹介。最期に、文化財レスキューで発見された新出史料の紹介。津野田文書や築山家文書、幕末明治期に家臣に預けられた細川家の具足のうちの一領、熊本藩の御用絵師が描いた屏風類で今まで知られていなかったものなどなど。破損と同時に、棚卸にもなっている感はあるなあ。洋画家田中憲一氏アトリエが全壊して、ボランティアベースのレスキューが行われているが、新しい年代の作品をどう扱うかは難しい問題だなあ。


 撮影可能な作品が二つあったので、パシャっと。
 千手観音かっこいい。背中が、モビルスーツバックパックみたい。後者は最近の工芸作品だが、どこをどう修復したのか分からないな。





「光は手元にあり:版画でたどる西洋宗教美術500年の歴史」

 後者、「光は手元にあり」は、町田市立国際版画美術館の所蔵品と熊本県立美術館の収蔵品を合わせて、版画の歴史をたどるもの。
 16世紀から20世紀に至る版画の歴史を、「聖書の世界を描く」、「神話の世界を描く」、「遠い世界を描く」、「メディアとしての美術」に分けて紹介する。
 最初は、キリスト教の布教のために、聖書の一場面などを量産するために発展した。そこから、様々な画題に展開していく。新たな表現を生み出すために、様々な技術開発の歴史が興味深い。
 個人的には、ピラネージの「カンポ・ヴァチーノの遠景」と「ディオクレティアヌス帝邸跡」が好き。
 あと、ピカソの作品も出品されているが、ピカソって、本当になんにでも手を出しているな。