- 作者: 今谷明
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 新書
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図書館で借りた本だが、予約が入って貸出延長ができなくなってしまったので、超特急で読んだ本。それだけに、いまいち身についてない感じが。応仁の乱もそうだが、諸勢力がフリーダムに離合集散するから、どうも、派閥争いの構図がつかめない感じが…
あと、一時的には、室町将軍を追い出して、畿内を差配する立場になった三好長慶の政権の晩年から没後の急速な崩壊が興味深い。長慶が構築した個人的人格関係によって実現した安定政権。著者の今谷氏は、三好長慶を信長の先駆として評価するが、どちらも、世代を超えた権威を構築できず、一代で潰えていくあたりは、確かに似ているなあ。織田、豊臣、徳川と三世代の試行錯誤で、そして、それ以後も数世代にわたる努力で、長期的な権威の構築に成功した感じがあるしなあ。安定した政権の構築は、それだけ難しい。
最初は、三好氏の飛躍の前提。中世の阿波が、藍の栽培や木材の供給で、非常に商業化した土地であったこと。三好氏は吉野川上流で、木材の輸送を支配できる立場にあったこと。
そもそも、三好家が畿内の政界にデビューした時点で、かなりの有力者だった感じがあるなあ。長慶の祖父之長が、すでに細川家の有力被官だったわけで。この之長は、細川家の内部対立、政元の暗殺と澄之、澄元、高国の内訌の中で、澄元方の有力者として活躍するが、最終的には敗死。一方で、この時期、淡路島の水軍衆を支配下に入れて、大阪湾の覇権を確保。その後の、畿内の覇権の基礎を手に入れる。
次は、元長と「堺幕府」の時代。高国政権を倒して、堺を拠点に足利義維、細川晴元、三好元長の政権が成立。京都にも、実際の影響力を振るった。
播磨勢を味方につけた細川高国を、大物崩れで自害させるが、その後畿内の国人勢力と対立して、細川晴元とも対立。一向一揆の蜂起によって、これまた悲劇的な最期を遂げる。
法華一揆と一向一揆の戦い、山科本願寺の炎上、法華一揆の京都追放と流れる天文法華の乱は、この時のものか。
堺を脱出した元長の子、長慶は、比較的早く復権する。本願寺と晴元の和睦の仲介、摂津の安定化の功績で、政界に復帰。木沢長政、遊佐長教、細川晴元らとの戦いを経て、将軍義輝を追放しての、畿内での独裁政権の確立。将軍義輝との和睦と、河内・大和の分国化。
三好長慶の政権は、彼の兄弟が各地を掌握していたことによる兄弟政権だったが、晩年になると、そこに隙が生じる。さらに、長慶自身の病死が、三好政権の崩壊の端緒となる。
長慶死後は、三好三人衆と長慶の後継者義継とそれを支援する松永久秀の対立。さらに、将軍足利義昭を支援する織田信長の進出による、畿内支配の崩壊。四国では長曾我部氏の進出と、三好氏勢力は消滅していく。三好氏の嫡流は、絶えたのか。むしろ、長慶と対立し続けた三好政長・政勝の系統が生き残って、旗本になっているのが興味深い。
しかし、畿内の勢力の弱体さが印象的だなあ。丹波、近江の六角氏、阿波の三好氏、紀伊勢、播磨勢と外部勢力の介入が、政界の変動の端緒になっているのが興味深い。特に、三好・六角は、畿内情勢に深くかかわっている感。
あとは、松永久秀の弟長頼が、早い段階ではより活躍していたなど。
次は、別の三好氏関係の本を読んでみるか。