千葉サドル『がっこうぐらし! 12』

 大団円。カタストロフとはいえ、結構、人間生き残っていたのだな。


 ランダルの追っ手に追い詰められる一行。そこで、大学の倉庫からドローンを入手した自堕落同好会の援護を受けて虎口を脱する。しかし、病原地域の大規模焼却予定と体調が悪化し続けるくるみという危機は、終わっていない。
 ボーモン君に残された椎子のヒントをもとに、そもそもの発生源には、パンデミックを防ぐ方法も備わっていたのではないかと喝破し、物語は最初の巡ヶ丘学院に戻る。
 しかし、完全に荒廃した学校は、より危機的な状況だった。それでも、那酒池の水を簡易浄水した水は、ゾンビに噛まれても、回復を可能にすることを明らかに。そして、核による病原地域の「焼却」を防ぐべく、通信機での呼びかけ。
 幻に導かれて、屋上にある通信機器を入手。同時に、これが「死者」に守られてきたゆきの「卒業」ということか。


 ランダルも、一枚岩ではなかった。徹底的に焼き払って人類の版図を回復しようと考える強硬派とゆきたちに希望を持とうとする穏健派に分裂。抗争の中で、ゆきの呼びかけを受けて、治療薬に希望を託す方向に一斉に転換する。まあ、ファンタジーだけど、「人間社会の真実」を見たいわけではないから、これでいいのかな。


 エピローグは、ゾンビウイルスの治療方法の発見により、人間社会の復興が始まった三年後の話。4人はそれぞれ別の進路を歩む。それでも、生きている限りは、つながっている、と。
 美紀は各地を旅して調査、りーさんは地区リーダーで同僚にフラグ建て、くるみは医者を目指して勉強中だけどめげてる。ゆきは、巡ヶ丘で教師か。めぐねえの跡を継いでいく感じなのか。美紀の「ゆき先輩はすごい人ですけど、そんなにはすごくないです」のセリフがいいなあ。ランダルの人々が動く動機はすでに人々のなかにあり、ゆきの呼びかけはきっかけに過ぎなかった。


 結局、くるみは車椅子生活か。スコップでゾンビ相手に無双していた頃の姿は取り戻せなかった。


 アラン・ワイズマン『人類が消えた世界』を見るに、リアルに考えると、放置された化学工場や原発から各種の汚染物質が放出されまくって、人類の先行きは暗そうだけど。あとは、各種の技術者が消えて、インフラから学術まで、いろいろな知識とノウハウが失伝しそうなのが…