熊本県立美術館「モダンアート ニッポン!:ウッドワン美術館名品選」展

 明治から20世紀中盤あたりまでの具象画を、洋画・日本画にまたがって紹介する企画展。こうしてみると壮観。あと、具象画メインのコレクション方針が、良い。


 展示は、「モダンな絵」「ものがたりの絵」「はだかの絵」「じょせいの絵/だんせいの絵」「みんなの絵」「こどもの絵」「せいぶつの絵」「きせつの絵」「ふうけいの絵」「とくべつな絵」という区分で展示されている。
 個人的な好みはやはり、風景画に偏るな。
 半分くらいの作品は写真撮影可という太っ腹設定。風景画を中心に、パシャパシャと取りまくる。とはえい、これはという作品はけっこう撮影禁止だったり。画家の没年、よく知らないけど後半の「せいぶつの絵」「きせつの絵」に撮影禁止が多かったのは、まだ著作権が残っている人だからなのかな。
 額縁のガラスや保護用のガラスで、反射して、良い感じには撮れなかった。自分が映り込むのを避けて、斜めからの撮影が多い。つーか、そもそも、絵画を撮影するのが難しい。

「モダンな絵」

 明治から大正にかけて、ヨーロッパの絵画の導入とその影響を受けた日本画。ここらあたり、割と好きだな。
 熊本が舞台ということで、最初に高橋由一「官軍が火を人吉に放つ図」が冒頭に。西南戦争の終盤、人吉での戦いを描いた絵だけど、戦争画というよりは、風景画という性質が強い。炎上する集落が印象的な絵。



 寺内萬次郎「作品(母子)」は、花がいっぱいの絵。油絵って、近づいたり、離れたりしながら楽しめる。この位の距離になると花がいい感じに。



 橋本雅邦「紅葉白水図」、横山大観「月」。朦朧体と呼ばれるスタイルの絵。前者のカラフルさがいいなあ。



「ものがたりの絵/れきしの絵」

 歴史画や物語に題材をとった絵など。こういうところはジャンルに関する知識が無いと、面白くない部分があるな。戦後の作品は、トンチを効かせた「面構葛飾北斎」や、背景に朝鮮侵攻の地図を描き込んだ「豊公」などが印象に残る。

「はだかの絵」

 裸婦像。その伝統がなかった日本では、展覧会で下半身に布がかけられて、その後、下半身を布で隠した姿を描くようになった。あるいは、キュビズムフォーヴィズムの影響を受けた裸婦像など。

「じょせいの絵/だんせいの絵」

 人物画。日本画美人画や洋画の肖像など。上村松園「舞仕度」は上品な出来。和田英作「ミカンを摘む少女」は油彩の鮮やかな絵だけど、少女の姿勢がちょっと作為的なポーズに見えるのが残念かな。
 基本、人物画には興味ないのだけど、佐分真「マンドリンを弾く道化師」が印象的。


「みんなの絵」

 こちらはたくさんの人物画描かれた絵画が。写真は撮れないが、藤田嗣治の「大地」は、店舗の壁画をトリミングしたもので、大きくて迫力がある。全部残っていないのが残念。北川民次「見物(メキシコ)」は先住民らしき人々を迫力たっぷりに描く。
 青木繁「漁夫晩帰」は、著名な「海の幸」と似た雰囲気の作品。


「こどもの絵」

 子供を題材にした作品。岡田三郎助の「横向きの少女」は、昔の剥離したポートレート風でいい雰囲気。
 本展覧会の目玉的扱いの岸田劉生「毛糸肩掛せる麗子肖像」、人物そのものよりも毛糸の肩掛けの描き込みに目を奪われてしまう。凄い質感。


「せいぶつの絵」

 静物画と生物画のダブルミーニング。ここ、好きな絵が多かったけど、ほとんど撮影禁止。ちゃんとメモを取っておけば良かったな
 小磯良平「人形」、見たときは「こどもの絵」の方と勘違いしていたが、この絵が好き。

「きせつの絵」

 春夏秋冬を表現した絵画を集めてある。ここも、撮影禁止&風景画のほうに目を奪われていたので、あんまりメモしていない。失敗した。

「ふうけいの絵」

 大正以降の風景画。横山操の「ウォール街」は、ジェッソか何かの盛り上げる系素材をコテで広げた左官仕事のような質感が印象に残る。
 あとは、富士を描いた絵が三つ並ぶが、横山大観「霊峰富士」は雪の富士山が、塗り残しで描かれるのがいい感じ。一方、林武の「赤富士」が、油絵の具の色彩の洪水が、離れると地形のうねりに見えて楽しい。


 佐伯祐三「パリの裏街」「ロカション・ドゥ・シボー」「下落合風景」





 小出楢重「枯木のある風景」。前景の枯れ木が印象的。あとは、高圧電線の上の人影。



 山下新太郎「嵐山秋霄」。漢字がわからんw



 冨田渓仙「渓山帰樵図」。大っきい絵は、やはり印象に残る。斜面の中腹の木道が…




「とくべつな絵」

 西洋絵画が二点。ゴッホの「農婦」、ルノワールの「婦人習作」と「花かごを持つ女」の対になった絵が出展。やっぱり、人物画にあんまり興味ないのだなあ、俺、と。