くまもと文学・歴史館「アーカイブズに見るくまもと17」

 テーマを変えながら行われている収蔵品展。今回は歴史サイドが「和歌をよむ武士たち:相良家の歌道」、文学サイドが「生誕150年 玉名出身の英文学者 戸川秋骨」の二題。


 前者は、相良家文書に含まれる歌道関係の資料を紹介。
 戦国時代の相良義陽と江戸時代後半の相良長寛・頼徳関連の歌道書や作品が展示。戦国時代の生き延びていく上で、交際の基礎となる和歌の技能は必須だった。和歌を通じて近衛前久と関係を深め、それを梃子に外交交渉の担い手になってもらおうとした。しかし、結果として島津に負けて、阿蘇氏攻撃の先鋒になって、甲斐宗雲相手に敗死しているのがつらい。
 あと、こういうのを見ると、上層武士の交際関係ってほんと広いのだなあ、と。
 江戸時代になっても、交際のネタとしての和歌は重要であった。この時代になると、半分は江戸にいて、妻子も江戸に居るわけで、上層武士感の交際の親密さも増すのだろうな。展示されている「和歌詠草」だと、各地の大名とか旗本が並んでるのが印象的。


 後者は近代文学関係。高瀬支藩の家臣から明治10年に東京に移住した一族出身。熊本との縁はかなり薄い感じもするが。横井小楠など実学党関係者との縁戚家系がけっこう深いな。
 明治学院から講師で生計を立て、その後34歳で東大選科に。高等学校や大学の教授として英文学を講ずる傍ら、様々な西洋文学を翻訳。さらに、文学雑誌『文学界』の同人として文学活動を行う。文学系のエリートって感じだなあ。
ja.wikipedia.org
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www.aozora.gr.jp


 書簡や原稿、著書などが展示。戸川秋骨が様々な文学者に出した書簡が集まってるのは、戸川秋骨の関係者から寄贈されたのではなく、コレクターが集めた物が県立図書館に収まったのかな。
 著作では『欧米紀遊二万三千哩』あたりが気になる。