ざっぽん『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 1-7』

 勇者の兄にして、「導き手」の加護を持つ主人公。しかし、勇者のレベルが上がってくると、初期値が高いだけの「導き手」は戦いについていくのが困難になる。パーティの維持や交渉ごとで頑張っていたけど、「賢者」アレスに出て行けと言われ、限界を自覚していた主人公はパーティを抜けることになる。
 そして、流れ流れて辺境の都市国家ゾルタンで、レッドと偽名を名乗り、薬屋を開業する。かつて、同じパーティに加わって冒険をしたリットと同居して、イチャイチャと平穏な生活を楽しもうとする。
 しかし、向こう側から事件が次々とやって来て。


 レッドが出て行った後の勇者パーティは、不信感から崩壊。しかし、そもそも「勇者」にとってもはやパーティそのものが必要なくなっていた。さらに、ゾルタンで起きた加護の衝動を抑える薬をばらまいた事件の犯人が勇者ルーティのもとに逃げ出してしまい、ほとんど自由意志を押さえてしまうレベルであった「勇者の衝動」を制御することに成功したルーティは、追加の薬を入手すべくゾルタンに向かう。
 置いて行かれた勇者パーティの残りは、魔王討伐と勇者との関係で立身を目論む「賢者」アレスを中心に追いかけ、ゾルタンでアスラ・デーモンに利用され、決裂。戦闘に。


 一巻、中休みを挟んだ後は、ヴェロニア王国の王位継承をめぐる争いが出張してくる。失脚した元王妃が流れ着いていて、それを追いかける失脚寸前の王子、さらに、まとめて潰す気の現王妃が押しかけてきて、ゾルタン発祥以来の大戦争に。
 大陸全体で見れば局地戦だけど、大きな流れを作る動き。そして、その中でやっぱり頼られるルーティ、と。


 適正や人生の目標と関係なく押し付けられる「加護」とその「加護の衝動」に縛られる中で、自分らしく生きていくことを模索する人間が、この作品中で「正」の側で描かれる。加護の衝動と野心に身を任せて自滅した「賢者」アレス。逆に、徹底的に加護を拒絶して、自分らしくあろうとしたレオノール王妃の同じ悪役でありながら、存在感の差が。


 結局、デミス神はどういう意図で「加護」を人間に与え、「勇者」とはどういう存在なんだろうな。あと、アスラ・デーモンはなにを知っているのか。つーか、アスラ・デーモンのほうが、何度もよみがえるあたり、よっぽどドラクエの勇者らしいが。「シン」とはなにか。色々と先が楽しみ。