佐山二郎『日本陸軍の火砲:迫撃砲 噴進砲 他:新装版』

 日本陸軍の火砲を紹介するシリーズの2作目の新装版。迫撃砲、ロケット砲、無反動砲、舶載火砲、列車砲、装甲列車を紹介。
 こうしてみると、日露戦争から29種類の迫撃砲を試作しているのか。日露戦争の戦訓をもとに迫撃砲を試作するけど、打ち上げ花火の筒みたいなのか、軽快さに欠ける臼砲みたいなのしか出てこない。その後、駐退機付きの迫撃砲から、ストークブランスタイルの迫撃砲へ。軽快さが武器の単純な武器というイメージだけど、軽く作るためには、砲身材料を奢らないといけないのか。九七式曲射歩兵砲の開発のために、官民合同で特殊鋼の鋼管を製造とか、なかなか大変だ。で、一番作られた九七式曲射歩兵砲でも、2000門程度と意外と製造数が少ない。歩兵砲と擲弾筒があったら、意外と必要なかった攻撃なのかな。
 20センチ以上級の重迫撃砲のでかさもヤバい。27センチの十四年式重迫撃砲が4トン、30センチの九六式重迫撃砲が19トンとか、とんでもない放列砲車重量に。ここいらは、攻城用の特殊兵器と言うべきか。


 噴進砲については、バズーカ類似の歩兵用対戦車火器である試製四式噴進砲のシリーズと、曲射ロケット砲類の2種類。どれも「試製」とついているけど、前者は本土決戦に備えて数千門単位で、後者もまとまって実戦投入されている。
 試製四式二十糎噴進砲は、硫黄島で実戦投入され、海岸地域で米軍の進軍スケジュールを大幅に狂わせている。
 現地で部隊が自作する木製噴進砲が、ちょっと涙ちょちょぎれる。


 無反動砲も、試製が取れていないけど、一応沖縄戦に投入されたのか。


 舶載火砲は、対潜兵器として準備された迫撃砲、輸送船にありものの火砲を搭載した自衛用火器、野砲を台座に設置して高仰角をとらせた臨時高射砲など。大小様々な砲が、船舶に搭載された。


 列車砲は、事実上1種類。九〇式二十四糎列車加農砲。沿岸防備用の火砲としてシュナイダー社から購入したが、そのまま格納状態に。昭和16年満州に送られるが、ソ連軍の侵攻時には移動のため分解中でまったく活躍できず…
 その後、4門ほど国産する計画があったが、戦況の悪化で未完成。


 装甲列車はシベリア出兵時に装甲列車の運用を見て、応急的に改造した車両から、満州鉄道が独自に警備用に製造した装甲列車、「臨時装甲列車」、九四式装甲列車へと展開。いかつくてかっこいいけど、側面を広くさらすから、全体の装甲は薄いんだよな。とはいえ、七十五ミリ級以上の火砲が四門、軽快に移動するというのは、自走砲が普及する前には驚異的な火力だよなあ。張鼓峰事件で第二装甲列車が実戦に投入され、対砲兵戦を行っている。